第65回
精気神と五臓六腑の協力協調関係

これまでお話してきたように、
精気神を整えることは
五臓六腑の働きによります。

中医学では五臓六腑の働きとは
それぞれに独立して行うことではなく、
お互いに協調しあって働くことであると考えます。
そこで今回は、
五臓六腑の協力協調関係について
お話をしようと思います。

五臓六腑の関係は
精気神の産生・貯蔵・運用で
互いに繋がって協力協調しています。
具体的には、臓と腑、臓と臓、腑と腑、
という三つの関係があります。

臓と腑の間には、
表と裏のような
密接な関係があると考えられています。
中医学では「表裏関係」と呼ばれ、
中国伝統哲学理論の「陰陽理論」によって
導き出されてきた中医学理論です。

臓は裏に、腑は表に位置づけられていて、
一つの臓と一つの腑とが表裏関係で繋がります。
具体的には、心と小腸、肺と大腸、
肝と胆、脾と胃、腎と膀胱、
心包と三焦の六つの表裏関係があります。

精気神の司りがよければ、
腑の飲食物を消化吸収運搬する働きは
順調に行えます。
腑の働きが順調であれば
後天の精気は充足となり、
臓の働きも良好になるでしょう。
反対に臓(或は腑)の働きが異常になると、
腑(或は臓)の働きも正常状態になれません。

臓と臓の間と、腑と腑の間には、
互いに生成と制約の関係があるとする
中医学的な考えがあります。
これは「生克関係」と呼ばれ、
中国伝統哲学理論の「五行理論」により
導き出されてきた中医学理論です。
臓と腑を五行の木火土金水で分類し、
その間の関係を考えます。
木には肝・胆、火には心・小腸、
土には脾・胃、金には肺・大腸、
水には腎・膀胱を、それぞれ分類します。

相生関係とは、木は火の生成を、
火は土の生成を、土は金の生成を、
金は水の生成を、水は木の生成を援助促進する
という関係をいいます。
つまり肝胆の働きは心小腸の働きを、
心小腸の働きは脾胃の働きを、
脾胃の働きは肺大腸の働きを、
肺大腸の働きは腎膀胱の働きを、
腎膀胱の働きは肝胆の働きを援助促進します。

相克関係とは、木は土を、土は水を、
水は火を、火は金を、
金は木を制約するという関係をいいます。
即ち、肝胆の働きは脾胃の働きに対し、
脾胃の働きは腎膀胱の働きに対し、
腎膀胱の働きは心小腸の働きに対し、
心小腸の働きは肺大腸の働きに対し、
肺大腸の働きは肝胆の働きに対し、
働きが旺盛になりすぎないように制約します。

中国の養生とは精気神の調整を中心とし、
五臓六腑の相互による協力協調関係を発揮する、
いろいろな方法を行うことであります。


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