第85回
『太極導引』鍛錬の「時間」 その一

実際に健康法を行うことになると
はたして一日の中で何回、何時に、
そして何分間やったら良いのだろうか
と思うのがごく普通でしょう。
鍛錬の時間を考えるときには、
二つの概念に分けてとらえるべきだと思います。
一つは何時から何時までという時間帯としての概念です。
もう一つは1回あたりの鍛錬に費やす時間の概念です。
今回は『太極導引』鍛錬の時間について
漢方医学の考えをそれぞれに照らし合わせながら
お話してみようと思います。

『太極導引』鍛錬を行う場合、一日の中で最良の時間帯とは
朝の5時から9時までの時間帯です。
しかしこれは他の時間帯に鍛錬を行うことがいけない
ということではなく、
効率的に考えればやはり朝の時間帯が最良といえるという意味です。
なぜならば
体内の「気血」の生成と流れは
「時辰」(時間帯のこと)の変動に応じて変化するという
漢方医学理論に結びつけた考え方によるものだからです。

中国の伝統では一日の時間帯を12時辰によって表示していました。
12時辰は数字ではなく、十二支で表示されています。
この12時辰の変動に対応して
体内臓腑の働きもそれぞれに活発化し、気血の流れを促します。
朝の5時から9時までの時間帯は
脾胃の働きが活発になり、「気血」が生成される大事な時間帯です。
また、この時間帯は
脾胃経脈の中の気血の流れも割と旺盛となり、
脾胃が司る筋肉に対してエネルギーとなる
「気血」を充足させようと提供するので、
筋肉が動き易くなります。
逆に、この時間帯に筋肉を動かすことで
脾胃経脈の中の気血の流れを促進し、
脾胃の働きも整えられます。

このような考え方から、朝に鍛錬する中国人が多いのです。

【参考】12時辰及びその時辰に対応して働く臓腑
子時(23pm‐1am) ――――肝  
丑時(1−3am)   ――――肺
寅時(3−5am)   ――――大腸
卯時(5−7am)   ――――胃
辰時(7−9am)   ――――脾
巳時(9−11am)  ――――心
午時(11am−1pm)――――小腸
未時(1‐3pm)   ――――膀胱
申時(3‐5pm)   ――――腎
酉時(5‐7pm)   ――――心包
戌時(7‐9pm)   ――――三焦
亥時(9‐11pm)  ――――胆


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