“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第198回
酒飲みの聖地、人形町「きく家」

日本酒の単行本のタイトルも決まり、
あとは、校正作業を行って出版の運びとなった。
タイトルは「世界一旨い日本酒」。
そして、副題に「熟成と燗で飲る本物の酒」。
6月17日に光文社新書から刊行される予定だ。
内容は、日本酒の造りの発展の歴史を踏まえて、
本物の酒造りを復活させてきた人々の熱い思いを伝え、
しっかりと造られた本物の酒は熟成して、
燗で飲むと世界最高の食中酒となって、
とても美味しい思いができること、
そして、それを楽しめる銘柄、お勧めの居酒屋を紹介したものだ。
興味のある方は本屋でぜひ手にとっていただきたい。

さて、その本の取材で、
人形町の「きく家」の別館である
「きく家 はなれ」を取材した。
「きく家」といえば、
美味しい地酒が飲める高級割烹として有名だ。
カウンターでもコースは14000円、
個室だとコースが16000円と、
庶民が気軽に入れる値段ではないが、
それだけ出す価値は十分ある。
親方の造る料理は自然の味を大切にしたものであり、
身体に優しい。
その一つ一つに、女将さんが
店の地下のセラーで熟成させた日本酒を合わせて出してくれる。
この相性が絶妙だ。

「きく家」は昔は甲州屋児玉商店から酒を仕入れていた。
その関係で、甲州屋の常連であった私は
親方の志賀さん、それに、女将さんのきえさんと
親しくつきあっている。
大阪の能勢の「秋鹿酒造」への見学ツアーに誘って紹介したり、
鳴門に渡って、漁師の村公一君を紹介したりしている。

「きく家 はなれ」だが、
本店の数軒先の倉庫を買い取って、屋内を改装したものだ。
昨年の秋にオープンしているが、
新築ということを感じさせない落ち着きを見せている。
それも、志賀さんが知り合いの大工とともに
漆塗りなどを自ら行って、
しっとりとしたしつらえを完成させたことによる。

店内は1階と3階が座敷で、2階がテーブル席となっている。
その室内の色合いが黒と茶でなんとも落ち着く。
個室ではないが、ゆったりしていて、居心地がとてもいい。
料理はコースが8000円で、
本館に比べると随分安い値段で提供しているが、
満足度は十分だ。 
志賀さんの料理は自然の食材の旨みを、
できるだけそのまま出すことを心がけていて、
派手な味付けはしない。
身体に優しい料理ばかりだ。
インパクトを重視する評論家や客からは、
評価されないかも知れないが、
このような、地味であるが、
素材の美味しさを大切にした料理にこそ、美食の原点がある。
それが、女将さんお勧めの地酒に実によく合う。
志賀さんは、入り易い価格設定で、
より多くの人に自分の料理を紹介したい、という思いから、
「はなれ」を開設したという。


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2005年5月25日(水)

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