“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第230回
青森の天然鰻

先日は素晴らしい天然鰻に出会えた。
といっても、
行き着けの新大久保のレストランの一品としてであるが。

青森県の小川原湖では昔は大勢の鰻漁師がいたらしい。
それが、最近は僅か一人になっている。
それも、このレストランが呼びかけて
105軒の料理店と共同仕入れをすることで、
このような地方のいい食材を定期的に捕獲する商売が
成立するように配慮をしている背景がある。

この共同仕入れは海外を産地としていた野菜の種を
日本に持ってきて、
日本の野菜とともに、農家に有機栽培をしてもらったり、
冬の間飛来する天然の真鴨を仕入れたりなど、
幅広くいい食材に対して行われている。
野菜では、このレストランで提供される
カリフラワー、トウモロコシ、茄子、ニガウリ、蓮根などを
生野菜でサラダにしたものは本当に美味しい。

さて、その天然鰻であるが、
焼いてから蒸した茄子の上に乗せ、
蜂蜜ソースをかけて提供された。
皮はしっかりとしていて、それがカリカリに焼かれている。
焦げる一歩手前の調理。
口に入れて一噛みすると、
その皮がカラカラと音をたてて壊れていく。
そのときに、皮の周りの脂が舌を刺激し、
鰻の香ばしさが口から鼻腔に上がっていく。
これは、養殖鰻では経験できない快感だ。

これまでに天然鰻で最高と思ったのは、
徳島の山里はなれた場所にある割烹料理屋でのこと。
こちらは、ご主人が一人で山野を歩き、山菜、茸を積み、
川に入っては、川海老、もくず蟹、川魚を獲って、
全て一人で調理する。
吉兆出身で、すでに吉兆を大きく越えている。
そのご主人の獲った天然鰻は、
東京の鰻やで食べる天然鰻とは全然違った、
いかにも川魚らしいこくのある味わいが素晴らしかった。
今回の青森の天然鰻もそれに匹敵する濃い旨みがある。

養殖鰻も坂東太郎などのように、本当に旨いものもあり、
天然鰻でも旨みがあまり感じられないものもたまに見かける。
しかし、極上の天然鰻に当たったときには、
養殖鰻では経験できない至福の時を過ごすことができる。
日本の川、湖、沼の水質を取り戻して、
天然の川魚をもっと頻繁に味わえるような国土政策を
ぜひ政府は実施してほしいものだ。


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2005年7月8日(金)

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