“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第278回
冷おろしの季節到来

日本酒が本当に旨くなる季節がやってきた。
残暑も終わり、窓から入る風に涼み、
庭の虫の音を聞きながら飲む燗酒は最高だ。
しみじみと一人で飲んでもいいし、
仲間とにぎわいながら飲んでもいい。
合わせる酒肴もこれから秋の味覚がいろいろとでてくる。
秋刀魚は最近では夏の盛りからではじめるようになったが、
いまがまさに旬だ。
鮭、秋鯖、カマスなども脂が乗ってくるし、
茸、野菜も美味しくなってくるものが多い。

秋口に飲む日本酒は、
季節が涼しくなったから旨くなっただけではない。
冬の寒い時季に醸造を終えた酒は、
半年の熟成をおえて、味のりがしてくる。
新酒の頃は荒くバランスがとれていなかった味がこなれてきて、
抵抗感なくスムースに口に入るようになる。

江戸の頃は、冷蔵配送システムなどは当然なかったので、
日本酒は秋口までは蔵で貯蔵されて、
秋風が吹く頃に出荷されていた。
それを「冷おろし」と呼ぶ。
涼しい季節を待つことによって、
半年間の熟成が自然にされるようになった。
そして、9月9日の重陽の節句を過ぎれば、
酒は燗をして飲む習慣があった。
つまり、昔は当然ながら、常温熟成をして、
その酒を燗して飲んでいたのである。
それが現代では地酒ブーム、吟醸酒ブームによって、
いつしか若い酒を冷やして飲むことが
当然のように思われるようになってきた。

冷おろしを冷で提供する地酒居酒屋が結構多い。
燗をするのは、大手のアルコール
あるいはアミノ酸や糖類を添加した
まずい普通酒に限定している居酒屋も少なくない。
秋口からは、しっかりと造った純米酒の
「冷おろし」をまずは常温でちょっと味見をして、
そして、燗をつけて飲む。
これこそ、日本の伝統食文化の実践である。
鍋なども美味しくなるし、
その熱々の料理には冷えた酒は合わない。
燗酒を飲んで、日本人に生まれた幸せをしみじみと味わいたい。


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2005年9月21日(水)

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