“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第363回
熟成日本酒を燗すると旨いのは何故か?

熟成した造りのいい日本酒は常温で飲んではもったいない。
冷などもってのほかだ。
日本酒を燗にすると旨くなる理由は
これまでも述べてきたので詳細は割愛するが、
その酒の奥に潜んだ味わいが前面にでてくる。
これは、人間の味細胞の温度感受性と
酒自身の物理的・化学的変化によるものだ。

熟成した日本酒は、
新酒の頃のとげとげした角がとれて、まろやかになってくる。
そして、焦げたようななんともいえない香りと味わいがついてくる。
10年くらい寝かせた日本酒をいろいろな人にご馳走すると、
まるで老酒のような香味だと表現する人がいる。
確かに似た香りと味わいがでてくるが、
老酒に比べれば日本酒は繊細なバランスが秀でている。

老酒と日本酒の造りがもっとも違う点は麹造りだ。
老酒は餅麹といって麦を主体とした原料を蒸して、
それに麹菌を撒き餅のように固める。
それを一月近く置いて自然に任せて麹菌を破精(はぜ)させる。
これに対して、日本酒の方は、
麹仕事では繊細な工程で短期間で造る。
酵母の扱いも日本酒は酒母造りを丁寧にして、
そこで酵母を逞しく育てていく。
それらが骨太で味の濃い老酒と、繊細な日本酒の差になっている。

日本酒を熟成させると、
まろやかにはなっているが、常温ではやや物足らない。
それは、熟成期間の酒が寝ている間に閉じこもった味わいが
まだ外にでてきていないからだ。
そこで、燗をする。
そうすることによって、熟成させた旨みも前面に押し出てくる。
つまり、熟成させたまろやかさに加えて、
熟成によって徐々に蓄えられてきた味わいが、
燗によって引き出される。
本当にいい酒を熟成させて燗をつけると、その余韻がすばらしい。
最初に口に含むと、熟成した香味がゆるやかに広がっていくが、
それが喉を通っていっても、口のなかに残っている。

それで、食中酒としては熟成酒の燗は最高だ。
最近、ある居酒屋でぶり大根と、
出雲の地酒「十旭日」の十年古酒の
すばらしいマリアージュを経験した。
ぶり大根を最初に口にすると、
旨みとともに、ぶりの魚臭さが感じられる。
その後、十旭日を飲むとその旨みが、
最初に食べたぶり大根の臭みを取り去り、
あわせた美味しさだけが残る。
さらに、その後で食べるぶり大根が不思議。
さきほど感じられた臭みがなくなり、
大根とぶりの旨みが前面に出ている。

日本酒の熟成と燗が最近やっと一般消費者にも認知されつつある。
日本酒の完全なる復権も近い。


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2006年1月18日(水)

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