“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第516回
美味しさを究める 〜その6 
美味しいものに感謝し、愛情を持つ

美味しい思いをするうえで、一番重要なことは、
食材とその生産者、さらに、それを育む自然の偉大さに感謝して、
その旨さを愛情を持って受け入れること。
また、料理屋に食べに行く場合は、
作った人、サービスする人の気持ちを理解しながら、
感謝の心と愛情を持って食べることだ。

野菜や家畜を育てるための生産者の努力と工夫と愛情がわかれば、
ひとしおその美味しさが理解できる。
魚介類を捕獲し、
一番美味しい状態で食卓に乗るように
処理プロセスを工夫する漁師の仕事ぶりを知れば、
その味の違いがよく分かる。
加工食品、調味料も、その生産現場を見学すれば、
美味しくしようとする努力と工夫に驚くことが多い。

このような農家、牧畜、漁師、加工業者などの情報は、
インターネットなどで手軽に取り寄せているだけでは
現場を知ることはできない。
生産現場を訪問する努力も必要だ。
それには、小売店、料飲店、仲買などと親しくなって、
原産者を紹介してもらえばよい。
良心的な生産者、中間業者も消費者の顔を知りたいはずなので、
訪問したいと言えば、喜んで受け入れてくれるだろう。

また、料理屋では、一見で訪問しただけでは、
その店の真価は分からないこともよくある。
常連となり、店の料理人、スタッフと仲良くなって、
その店の工夫と努力を知ることが、料理をより美味しく感じさせる。
私自身、最初に訪問したときにはどうかと思っていた店が、
数回行ってみて、その真価をようやく理解できたこともある。
店の常連となれば、
他の客には分からないように、
特別な対応をしてくれることも多い。
食材でも一番いい部分を使ってくれたり、
気合を入れて調理をしてくれたりする。
これはえこ贔屓ではなく、
料理屋としては当然のことをやっているまでだ。

さらに常連となれば、お店が客の嗜好を分かってくれるので、
その客に合わせた調理をしてくれる場合さえある。
料理屋はお客の好みは一見では分からないので、
平均的な嗜好を考えた調理、味付けをしている。
それが、客の好みを熟知すれば、
偏差値を極端にふる調理が可能だ。

このように、料理屋のよさは、
店だけが負うものではなく、
客も店と一体となって、発揮されるもの。
一方通行ではなく、店と客が気持ちを通じながら、培われるものだ。
そのようにして、料理屋といい関係ができてくれば、
その店の料理に対して愛情を持ち、
料理人とスタッフに感謝して、美味しく食べることができる。


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2006年8月21日(月)

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