“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第554回
岩本さんの絶品の料理は続く

Iさんの持ってきていた赤ワインは
カリフォルニアのセゲーシオファミリーの
ジンファンデル2003年。
セゲーシオファミリーは最近とみに人気の高い造り手だ。

そして、次の料理は魚の山椒焼き。
それほど大きくはない魚が開いたまま焼いてある。
川魚らしい。
口に入れてみると、これまでよく食べていた懐かしい味。
んー、穴子に似ているが、姿形は全然違う。
サービスをしてくれている岩本さんの奥さんに聴いたら、
「川穴子」という魚らしい。
ドンコとも言って、ゴリの仲間という。
まだまだ知らない食材はたくさんあるものだ。

続いて、おそらく出てくるだろうと予想していた、モクズガニ。
以前モズクガニと書いて、
知り合いから誤りを指摘されたことがある。
酒蒸ししてあるようだ。
これがまた美味。
上海蟹の仲間のようだが、繊細な味は上海蟹を越える。
これに、コウタケという茸が添えてあった。

最後に近くなって、「落ち鮎」が提供される。
これが、また意外性があった。
カツオと昆布の出汁に葛餡が掛けてあったが、
食べて甘い味わいが口のなかに広がる。
なんと栗を包んである。
鮎の適度なほろ苦さに甘さが加わって、初恋のよう。
まさに至福の味だった。
そして、鮎の骨をカリカリに焼いた骨せんべい、
さらに、スッポンの卵巣と肝が提供される。
それに、茄子の肝和えが添えてある。
これは、また日本酒によく合う。

しかし、これだけ食べて、お腹が全然はらない。
むしろ、身体がよろこんで受け入れ態勢が万全になっている。
そんなところに、食事が運ばれてきた。
今回は「初茸ご飯」。
初茸の香りがご飯の甘みに溶け込み、
何杯でもお代わりできそうだった。
これだけ食べた後のご飯がまた美味しいのは、本当に嬉しい。
そして、最後のデザートは酢橘のシャーベット。
爽やかな冷たさで、さっぱりとする。

岩本さんの料理はいつきても新鮮で驚きがある。
しかし、その驚きは奇をてらったものではない。
極めて自然な流れのなかにあるのだ。
こんな割烹が東京にあれば嬉しいが、
東京ではとてもこれだけの食材を使うことは不可能だ。
徳島の山奥までわざわざ出向く価値がとても高い。


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2006年10月12日(木)

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