死ぬまで現役

老人を”初体験”する為の心構え




第6回
お金の空白と時間の空白

私のところへ相談にくる人をみても、
定年を迎える人が一番心配しているのは、
退職後の収入のことである。
サラリーマンを長く勤めてきた人は、
お金にあまり執着はないし、
これまでお金で冒険するようなチャンスをほとんどもたなかった。

だから、貯蓄をする場合も安全第一を考えて、
定期預金にしたり、ビッグやワイドを買ったり、
一時払い養老保険に加入したりといったていどの人が多い。
そういう人たちは昨今のような低金利時代になると、
利息収入が半減してしまうし、
マル優廃止で20%の源泉課税をさしひかれると、
さらに利息分が減ってしまう。
金利生活者にとって、まさに踏んだり蹴ったりの
悪い世の中である。

だから、サラリーマンは収入のことを第一に考える。
まず生活をしてゆけるだけの収入源を確保することに心を砕く。
収入さえあれば、退職後の時間のすごし方は
ゆっくり考えればよいだろうと、
ついうっかり思い込んでしまう。
しかしほんとうは、ちょうどその逆ではないかと思う。


長い間、サラリーマンをしてきた者にとっては、
金銭的な空白よりも仕事の上の空白のほうが、
おそらく耐えがたいであろう。
サラリーがなくなるといっても、
一ぺんになくなってしまうわけではないし、
当分食べていけるだけの退職金もあれば、蓄えもある。
月給には及びもつかないけれど、
年金の支給だってある。
だから、一年や二年遊んでも、何とか埋め合わせはつく。

ところが、時間にブランクができると、
この先それがずっと続く可能性があるだけに、
何ともやりきれなくなる。
仕事を自分でつくってきた者は、
忙しく立ち働く術を心得ているから、
自分で忙しく振舞うことができる。

ところが、時間売りのような形で会社づとめをしてきた人は、
会社をお払い箱になると、
すっかり勝手が違ってしまって、
あまった時間を何に使ってよいかわからなくなってしまう。
長い間、自分の時間を自分のために使う習慣がなかったから、
退職した翌朝から、途方に暮れてしまうのである。

実際、時間とお金と二つ並べてみると、
時間の空白を埋める仕事のほうが、
お金をつくる仕事より難しい。
それを造作もなく埋めることのできる人は、
自分で仕事をつくり出すことになれた人である。
だから仕事にも困らないが、
その代わりそういう人は
いつまでも仕事から解放されることがない。
おそらく、一生を現役で送るよりほかないだろう。

「六十の手習い」をやるくらいなら、
いっそもっと早くから、
たとえば四十歳前後から独立したほうがいい。
定年は人にきめられるより、自分できめたほうがよいのである。





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2014年12月3日(水)

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