死ぬまで現役

老人を”初体験”する為の心構え




第41回
忙しい人は時間をつくり出す

どんなにいろいろな土地を歩いても、
甲の土地から乙の土地へ移動する乗物の中は
変化の少ないものである。
移動に要する時間は短いほどよい。
とりわけ忙しい人間にとっては、
たとえ十七時間が十時間に縮まっても、
退屈なことに変わりはない。
まして船の中となれば、ジリジリして我慢の限界を超えてしまう。
「昔は皆が船旅をしたじゃないか」と
反論する人があるかもしれない。
しかし、昔は船しかなく、それが一番早い交通手段だった。
のんびりしたいからといって、
もう一度、船の時代に逆戻りすることはできないのである。
いったん、忙しいスケジュールになれた人は、
船を選ぶどころか、コンコルドに乗るために
高いお金を払おうとするに違いない。

したがって、東京からニューヨークに行くにしても、
東京からパリもしくはロンドンに行くにしても、
あちこち寄り道をする便より直行便に乗るほうがいい。
甲の地点から乙の地点に行く時間は
なるべく短くして、
乙の地点に到着してから滞在する日数を
できるだけ長くするのが現代風の旅行である。
その代わり目的地に到着すれば、勝手知った土地であっても、
しばらく不在にしていた間の空白があるし、
同じホテルであろうと、同じレストランであろうと、
船の中の同じベッドや同じ料理とはわけが違う。

そこには動きまわる自由があり、
懐かしさやセンチメンタリズムを誘う思い出がある。
あの通りを歩いてみたいとか、
今夜は久しぶりにあの店でタ飯をとってみたい
という気持ちが働けば、
もう身体のほうがしぜんに動き出しているのである。

旅行は動静のうちの「動」の部分にあたる。
生活に変化や刺激を感じなくなれば、
それは「静」の中に埋没してしまったようなものだから、
すぐにも旅に出かけることである。
私などは静止状態をひどく嫌うので、
毎日のように国内を動いていても、
自分の心臓がとまってしまうのではないかと
不安になってしまうほど、いらいらしてくる。
一ヶ月もしないうちに海外の空気を吸うためにとび出して行く。

それは、ヒマになったから出かけるというのではなくて、
忙しくて時間がない時でも、
何とか時間をつくってとび出して行くのである。

忙しい忙しいといっている人は、
私が見ていると、その実、そんなに忙しい人ではない。
忙しくてどうにもならない人は、
必要に迫られて時間を有効に使わざるを得なくなるので、
結構、時間の余裕を持っており読書をする時間もあれば、
恋人にあう時間もちゃんと捻出できる。
時間があるから海外旅行に出かけるのではなく、
海外旅行に行きたいから、時間をつくるのである。
できるだけ動きまわり、
できるだけ変化のある生活をすることは、
人生を退屈しないですませる最も効果的な方法である。

「やることがなくなったからヒマを見て旅へ出かけよう」
と考えるよりも、「退屈する前に早く世界の旅に出かけよう」
というのでなければ、
このスピードのある時代のスピードにあわないのである。





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2015年2月23日(月)

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