死ぬまで現役

老人を”初体験”する為の心構え




第89回
相続税対策は歳月をかけて

後に遺された人々が事業を遺されて迷惑するのは、
第一に遺された事業が時代遅れで、
採算に乗らない業種であった場合、
第二に遺された事業が相続税の対象になって売るに売れない場合であろう。

前者の場合は本人が経営していても本当は早晩、整理をしたり、
方向転換をしなければならない問題であろう。
しかし、本人には自分の興した事業に対する愛着があって
なかなか快刀乱麻というわけにもいかず、
愚図愚図しているうちに死んでしまう。

「会社の寿命は三十年」という本があるが、
ちょうどその時期に遺産相続が行われれば、
親父の時代に整理のつかなかった事業を息子が整理する番になるだろう。
これに対して事業は何とかやって行けるが、
相続税には泣かされるという場合はあらかじめ、
相続税対策をやっておけば問題はかなり改善される。
そうはいっても税金対策は脱税と違って
それなりのルールに従わなければならない。
それを効果的に実行するためにはかなりの歳月を要する。
しかも相続税対策は相続人がやることではなくて
被相続人のやるべきことだから、
財産を遺す側が相続に対して理解を持っていなければ実行のできることではない。

税金を節約する方法は
まず相続税の対象になる財産を如何に減少させるかである。
生きている間に使えるだけ使って減らしておくのが
一番すっきりした方法である。よけいなことで頭を痛めないですむからである。
しかし、多くの人は自分の築いた財産を減らすことには
抵抗を感ずるから、次善の方法は借金をふやして
計算上の財産の総額を減らすことである。

たとえば、一億円の借金をしてマンションなり土地なりを買う。
借金はそのままマイナス勘定として計上されるが、
借金をして買った不動産の評価は路線価格でやるから、
一億円の時価のものでも時価の四割ていど、
即ち四千万円前後で計上される。
とすれば、借金を一億円するたびに相続金額は六千万円ずつ減少して行く。
十億円借金をして不動産を購入すれば、
財産が六億円減った勘定になる。
これは名案だというので、
最近は、相続税刻策として借金をして不動産を買う人がふえてきた。
もちろん、合法的な行為だから、さしとめるわけには行かないが、
さりとて見ている前でとれる税金がとれないのも癌だと見えて、
税務署では死亡時からさかのぼって三年以内に購入した不動産は
時価で評価されるという改正を行った。
相続財産は、高率の税率をかけてとりあげるのがさも当然だ、
という見解だが、長く税金をとる仕事に従事していると、
正常人の持つ感覚を次第に喪失してしまうのであろうか。

それはともかくとして、税務署が抜け道をふさぎにかかるということは、
ここに抜け道がありますよ、と教えているようなものである。
不動産を買ってから三年は認めないということであれば、
三年以上たてばよろしいということであるから、
相続税対策は短兵急にできるものではないということがわかる。





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2015年6月15日(月)

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