至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第26回
酒の国の居酒屋『酒盃』

秋田に帰省する度、
お約束のように訪れる居酒屋『酒盃(しゅはい)』。
秋田の旨いつまみと一緒に
県内の玄人な地酒を飲むならここです。

昨年末にも行って来ました。
酒林の下、格子戸を開け、靴を脱いで
ピカピカの板の間へ上がる。
店内はぬくぬくと暖かく、
カウンターに通されると
その向こうにはズラリと並んだ秋田の地酒。
メニューにも、
店主が選んだ各銘柄と、純米・吟醸などの区分、
町名レベルの生産地が並んでいますが、
正直言うと書いてないお酒もたくさんあります。
なので、ここは好みを言って
店主の沖口さんに教えを請うのが楽しいでしょう。

私は純米酒が好きなので、
「純米で、甘過ぎず、ふくよかな」と
ちょっと欲張って言ってみました。
すると沖口さんは、
「ではこの、刈穂を」
と、速攻でバシッと決めてくださる。
「刈穂の純米生酒はいかがですか」でなく
それなら刈穂のこれです、という姿勢には
人柄か、テンポの速さからか、不思議と押しつけがましさがなく
何か信念のようなものを感じます。

ちなみにお酒はきっちり正一合。
いろいろ飲んでみたい人には
半合にしてくれるのもうれしいところです。

はたして、片口に注がれて現れたのは
神岡町で造られる刈穂の、純米生酒しぼりたて。
刈穂の純米は何度か飲んだことがありますが
これはまた違った印象で驚きました。
なんとも穏やかに香り立ち
米の甘みをほんのり感じながら後口はキリッと。
しみじみ、うまい。
ちょうど新酒の出始め時期だったのも幸運でした。

そして
こちらでは、お通しは箱膳で供され
6品ほど入っています。
この日はあん肝のネギ味噌、イカのとも和え、
穴子の煮こごりなど。
これだけでもちびり、ちびりと飲れるのですが
やはり秋田の、旬のつまみも堪能したい。
比内地鶏のたたき、だだみ刺し、
ハタハタは素焼き、田楽、塩魚汁椀……。

これから春にかけては、
ばっけ(ふきのとう)やアイコなど秋田の山菜が、
夏なればじゅんさいが、
そして秋田の海で獲れる
ぷっくりとした岩がきなどの魚介が食べられる、つまり
春夏秋冬足を運びたくなってしまう店。
東京在住の私にとっては、帰る度に
故郷の豊かさを実感させてくれる場所です。


■酒盃
秋田県秋田市山王一丁目6-9 TEL 018-863-1547


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2004年1月26日(月)

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