至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第35回
謎の?ミシュラン調査員

ミシュランは、完全覆面調査で有名です。
ただしガイドブックには調査員が食べた料理が載るので
後から考えれば「あの客だ」というのがわかるらしい。
さらに調査員が店にいるときから
「ミシュランに違いない」とピンとくる、という
シェフもいました。
店の誰かが匂いに気づいた途端、
厨房に緊張が走るのだとか。
いったいどんな匂いが漂っているのでしょうか……?

あらゆるコネや権力から独立した存在であるミシュランは、
イタリアのシェフ達の間でも
特別な意味をもっているようです。
その、イタリアの2004年度版ミシュランで
一つ星を獲った
堀江純一郎シェフのリストランテ『ピステルナ』には
彼が把握しているだけで2回(疑わしいのも入れれば3回)
調査員が来たそうです。

では、ミシュランはどこを見るのか。
よく言われるのは、料理だけでなく
ワイン、サービス、建物、インテリア、食器に至るまで
すべての総合点で評価されるということです。
そのため『ピステルナ』でも、オープン当初から
二つ星クラスのサービスを意識していたそうです。

ミシュランの『ピステルナ』に対するコメントには
「1400年代に建てられた邸宅、
このエレガントなリストランテのフロアには
フレスコ原画と、意外にもモダンインテリアが。
しかし本当に素晴らしいのは料理。見逃してはならない」
とありました。

料理に関して言えば、堀江シェフ自身は
「初めての星を与えるときは、基本技術を見るのではないか」
と考えていたそうです。
肉への火入れの加減や、基本的な伝統料理の技術など
あたりまえのことができているのか。
で、星を獲ったら次の年はまた別の部分を見る。
だから
常に前進していかなければ
星をキープすることは難しい、と。
ミシュランの星に限らず
リストランテにとって「継続する」ということは
「前進し続ける」ということを意味するのです。

『ピステルナ』では、伝統料理と
彼のオリジナリティを盛り込んだ新しい料理とが
半分ずつの割合で構成されています。
堀江シェフ自身に言わせると、「核」にしているのは
ピエモンテに伝わる骨太な伝統料理だそうで、
それをしっかりと意識しながら
「余った部分で遊んでいる」のだとか。

骨太というと、荒っぽさやラフな感じを
想像されるかもしれませんが
2年前、私が『イル・カシナーレヌオーヴォ』という
リストランテで彼の料理を食べたときは
むしろ細かい仕事をきっちりこなしている印象。
きっとその積み重ねが、骨を太くするのでしょう。

写真で見る『ピステルナ』は相当素敵です。
古い木の扉、ドーム型の天井にフレスコ画、
対照的にモダンな、真っ白のインテリア。
……なんて話を書いていると
今、勢いに乗っている彼の店に行きたくて、食べたくて、
うずうずしてきて困ります。
悔しいけれど
イタリアに行く予定のある方、一足お先にどうぞ。


■Pisterna(ピステルナ)
15, via Scatilazzi , 15011 Acqui Terme(AL)
TEL: +39-0144-325114


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2004年2月6日(金)

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