至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第47回
トスカーナのチーズといえば

生まれて初めて行ったチーズの講習会、
この日のテーマはトスカーナ州のチーズ
「ペコリーノ トスカーノ」。
ペコリーノとは、ペーコラ=羊の乳で作られる
中部から南イタリアのチーズです。
ちなみに北イタリアは牛の乳が大半です。

後に産地名をつけて「ペコリーノ ○○」と呼ぶので
トスカーナが産地なら
「ペコリーノ トスカーノ」になるという
ひねりも何もない、そのまんまの名前(笑)。
ローマやサルデーニャなどでも作られ、有名ですが
“トスカーナ州と言えばペコリーノ”
といわれるくらい
この州の代表的なチーズでもあるそうです。

ペコリーノという名前は同じでも
ローマとトスカーナでは違ってきますし
同じトスカーナ州内であっても
シエナにはシエナの、ピエンツァにはピエンツァの
それがあります。
つまり、ペコリーノという名は
羊乳チーズという大ざっぱなくくりなので
産地ごとに作り方が微妙に異なったり、
たとえ産地が同じでも熟成期間や作り手によって
味わいはまったく別ものになるのです。

本日のチーズは5種類。
1「ペコリーノ トスカーノ」
  フレスコ(30日熟成)・グローセット産。
2「ペコリーノ ピエンツァ」フレスコ・ピエンツァ産。
3「ペコリーノ ピエンツァ」
  スタジオナート(熟成タイプ)・ピエンツァ産。
4「ペコリーノ セネーゼ」
  スタジオナート・シエナ県サンジミニャーノ産。
5「ペコリーノ セネーゼ」
  黒トリュフ入り・シエナ県サンジミニャーノ産。

私の感想を記しておきますと、
は羊乳の濃厚な味わい、むっちりした食感です。
はトマトペーストを表面に塗って熟成させたものだそうで
 舌にほんのり苦味が残りました。
は熟成している分深みがあり、2よりまろやか。
は塩が強く効いていて、海老せんべい(?)に似た香りが……。
は塩味も抑えられ、黒トリュフの香りが
 口の中から鼻へもわもわと膨らむ贅沢な味わい。

一度に食べ比べてみると、
ひとつひとつの食感も味も全然違う事実に、頭より先に
舌がびっくり。

講師の西村さんは
トスカーナの地図を片手に
せっせとチーズを切り分けながら
自分で巡った街々の写真を回しては
イタリアとペコリーノ トスカーノにまつわる話を
聞かせてくれます。
古代ローマ時代以前に、伝説の先住民族・エトルリア人が
作ったといわれる街、サン・ジミニャーノ。
ローマ法王ピウス(ピオ)2世を生んだピッコロミーニ家の街、
そして城壁に囲まれた美しい街でもあるピエンツァ。
これら小高い丘の上の街から眺める
トスカーナの素朴な風景。
ああ……。
この場所で、この風景の中で食べてみたいという気持ちが
抑えようもなく
口の中の羊乳の匂いと一緒にふくらんでくるのです。


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2004年2月24日(火)

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