至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第129回
東京・青山。洗練のベーカリー

わかりづらいと聞いていたその店は
奥青山とでも呼びたい場所の
ビルの2階。
しかし、ジャズバー『BODY & SOUL』の上だと
最初から知っていれば
少なくとも私は
こんなに迷うことはなかったのに。

フランス料理店『カム シャン グリッペ』の
淺野正己シェフがプロデュースする
『デュヌラルテ』は
いろんな意味で、およそベーカリーらしからぬベーカリー。
初めての人はまず迷う道のり、
路面店でなく路地の、そしてビルの2階という環境。
やっと見つけて扉を開ければ
そこはNYのジュエリー・ショップを思わせる
ミニマムな空間なのです。

手書きのPOPもなければ
籐のバスケットも、サンドウィッチの冷蔵ケースもありません。
あらゆる有機的なものを削ぎ落とし、
天井から壁まで
ホワイト&シルバーに統一され、カウンターには
唯一の有機物であるパン達が
宝石のごとく
整然とならんでいます。

説明書きはありませんから
一つひとつ、店員に
どんなパンなのかを訊ねるのですが
これが、いちいちおいしそうで
客は
ルビーかサファイアかを悩むように
山葡萄かライ麦か、と考えあぐねるのです。
(価格はぜんぜん違いますけどね)

さて、歩幅にして5歩程度の長さを
行ったり来たり、また行ったりして
やっとのことで選んだパンは
これがまた
私のちっぽけな概念を
ぶんぶん揺さぶる個性的な味わいなのです。

ライ麦粉を使った香ばしい「セーグル」。
チーズのコクとクミンの香りが豊かな「パガプリュ」は
きめ細かな肌質で、しっとりもちもち。
待ちきれなくて
歩きながら紙袋を開けて食べた「ペパン」は
サクッと焼き上げたクロワッサンの生地に
チョコチップを散りばめたもの。
バターの風味が格別です。
そして
山葡萄がたっぷり入った「ヴィーニュ」。
酸味があって、ちょっとワイルドな山葡萄が
それはそれはびっしりと練り込んであります。
これをちぎりながら
ワインを飲んだら最高だろうな……と思うだろう
飲んべえのために、隠し球がひとつ。

店の奥、カウンターのちょうど裏側には
隠し部屋のような空間があり
昼はギャラリー、夜はバーに変わります。
しかも、バーはオートロックなので
暗証番号を押さなければ入れないという秘密めいた雰囲気。
(暗証番号はお店のHPに書いてあります)


■d'une rarete(デュヌラルテ)
東京都港区南青山6-13-9-2F TEL 03-5464-2604
URL http://www.dune-rarete.com/


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2004年6月17日(木)

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