第二章 密貿易で儲けたお金で 台湾独立の賭けに敗れ香港で立ち往生
賽は投げられた
「背水の陣」というコトバがあるように、人間は時々、自分をのっぴきならぬ状態におくのが身のためだと、私は思っている。逃げ道がいくらでもあると、形勢がおかしくなってくれば、人はすぐにも敵に背を見せる。ところが、川を背に布陣すると、退けば水の中に追い落されるだけだから、いやでも前に進むよりほかない。決死の覚悟をすれば、活路はおのずからひらかれる可能性が強いのである。
意識してそうしたわけではないが、私は二十四歳のときに、自分をそういう立場に追い込んでしまった。終戦直後の台湾における国民政府の腐敗ぶりをイヤというほど見せつけられてしまった私は、「台湾の将来の地位をきめるにあたっては、国民投票をしてきめるべきだ」と国連に請願書を出した。「賓は投げられた」というに等しかった。およそ中国人のつくるような政府は、誰が権力を握っても、民主主義からほど遠いことに変わりはないから、私のようなことをすれば、叛国罪に問われ、つかまればまず命はない。それを承知で、弓をひいたのだから、よほどの情勢変化でもない限り、もう二度と故郷へは帰れなかった。
ただ、私はまだ年が若かったし、何よりも国民政府が毛沢東のひきいる共産軍に大敗を喫するだろうと信じていた。国民政府ほど腐敗しておれば、民心が離反するのは当たり前だし、軍人も役人も、勝てば信賞必罰の対象になるが、負ければ公金を持ち逃げできる。だから敵の猛攻にあえば山が崩れるように潰減するだろうし、「昨日の敵は今日の友」で、昨日まで国民政府についていた民衆が、その日から新しい支配者に靡(なび)いてしまう。
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