一週間ほどすると、頼は東京に現われた。シラスはキロ当たり三十万円にもなっていて、三百キロ買っても、一億円近いお金がかかる。東京の私の友人の中には、養鰻事業に乗り出したいと考えている人もあったし、また私と一緒に台湾へ視察に行った経営者の中には、何か有望な仕事があったら投資をしてもよいと私に依頼していた人もあったので、私がちょっと声をかけると、立ちどころに一億円のお金が集まった。
そのお金を本人に渡すとき、一瞬、私はためらった。しかし、シラスを集める仕事は日本側の出資者の一人がやることになっており、それも年にいっぺんの仕事で、もうシーズンに入っていたので急ぐ必要があった。調査局の幹部の人に本人の信用調査をたのんだら、大丈夫だという返事ももらっていたので、仕事を任せるといった以上、全面的に信用するよりほかないだろうと思って、思いきって金を渡した。
一億円を手にした頼は台湾に帰ると、新しい養殖会社をつくったが、一体いくらシラスを買ったのか、何にいくら支出したのか、私がいくら催促をしても報告をしない。私が怒って文句を言ったら、四月に私が帰ったとき、一枚の便箋に「日本円一億円は台幣一千三百万元で、シラスを一八〇キロ購入した。一キロ五万元だから九百万元であり、残額は四百万元ある」と書いたメモを私に渡した。
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