元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1217回
「戦艦大和」の映画を観ましたか?

いろいろな意味で話題を呼んでいる、
映画「男たちの大和」ですが、
12月5日、5000人を集めた、
東京国際フォーラムの
プレミアショー(特別試写会)に
行ったときの感想を少し書きます。

排水量7万トンという
世界最大の化け物戦艦「大和」が
終戦直前に沖縄洋上に水上特攻に出撃。
3000余名の青年兵士たちを乗せて
壮絶な最後を遂げた・・・
そういわれても、
「どう、イメージしたらよいのか?」
「どう、あの戦争を評価したらよいのか?」
とくに、若い世代の方は戸惑うものだと思います。
当時と比べたら、比較にならないほど、
いまの日本は、平和そのものを“謳歌している”、
いや、平和ボケに浸っていますからね。

したり顔で、こうしたことを書いている僕にしても、
ことし65歳の爺さんですが、
戦争の惨状もうるおぼえ
当時は満4歳で、記憶世代としてはスレスレです。
東京大空襲のときに轟音を立てて来襲する米軍機。
その恐怖の夜空を照らす
地上探照灯(サーチライト)の光線が
「いやに明るかったなあ」と、思い浮かぶ程度ですから、
もはや、半数以上の日本人が、
「戦争を実感しない世代」となっているわけです。

この映画は、海底に眠っている戦艦大和を執ように探索し、
また、実物大の戦艦大和の映画セットまで作ってしまった
マスコミ界の風雲児・角川春樹さんが、
姉であり作家である辺見じゅんさんの小説
「男たち大和」をもとに作品化しただけに、
20億円という、その製作スケールが話題をまいたわけですが、
なんとしても、この60年が問いかける、
歴史のメッセージが見所ということになります。

「なんだ、またぞろアナクロで感傷的な英霊礼賛か?」
と、こき下ろすまえに、
この映画の2時間半のボリュームを
堪能することに損はないと思います。
大音響の戦闘シーンと、涙、涙の最後の別れ・・・、
その幕間から、かなりあからさまな“魂の実弾メッセージ”が
”歴史忘却症”の僕たちに向かって飛び込んで来ます。

ちなみに、5日、プレミアショーで
舞台挨拶した主演の反町隆史や中村獅童らも、
いわずもがなですが、戦争を知らない世代。
「60年という“忘却の節目”のいま、
 水上特攻兵たちの死の意味をどう捉えるか。
 戦争は繰り返してはいけない」と、
かなりストレートなスピーチをしていましたが、
おそらく、製作者の角川さんが言いたかったことは、
長島一茂が扮する白淵磐大尉の言葉に
象徴されているように思います。

「進歩のないものは決して勝たない。
 負けて目覚めることが最上の道だ。
 日本は進歩ということを軽んじ過ぎた。
 私的な潔癖や徳義にこだわって、真の進歩を忘れていた。
 敗れて目覚める。それ以外にどうして日本は救われるか。
 今、目覚めずしていつ救われるか。
 俺たちはその先導になるのだ。
 日本の新生にさきがけて散るまさに本望じゃないか」

誰でもが「戦争など馬鹿馬鹿しい」と、
思っているにも関わらず、いま
「日本人の心のつながり=過去・現在・未来の連綿性」を
直視する余裕がないのではないでしょうか?
とすれば、この“実物大・戦艦大和”で演じられる
「60年前の日本」からの問いかけは、
「行き当たりばったり」で「歴史忘却症」に陥っている、
僕たちの魂に、ちょっとした「渇」を入れてくれるはずです。


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2005年12月26日(月)

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