元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1770回
20世紀初頭と21世紀初頭は似ている?

40歳から魂が進化する!
そのためにも、40歳を過ぎたら、
宗教、哲学、科学、そしていのちに関する、
長命な哲人や作家たちの古典名著を再読しよう、
とくに100年前、200年前の名著を読もう――という、
ちょっと「渋い話」をもう少し続けます。

僕の提唱している「患者は温かく和やかに過ごそう」という、
スローヘルス患者学=創造的患者学の理論は、
主治医である帯津良一医師から教わった、
身・魂、心丸ごとを見るホリスティック医学に由来しています。
その帯津理論の基礎哲学は、100年前の「創造的進化」の著者、
フランスの哲学者・アンリ・ベルクソンの
「宇宙、自然の大いなる生命エネルギーと
わが身のエネルギーが共感して創造的進化をする」にありますが、
僕は、偶然にも、ガンになるまえに、
いわば「生身のベルクソンの講演」を伝える内ヶ崎作三郎著、
「近代人の信仰」という100年前の本を読んで
感銘を受けていたわけです。

ちなみに、内ヶ崎さんは、
明治・大正・昭和に活躍した自由主義の思想家で、
いがみ合う「宗教・宗派を統合して
理想社会建設に貢献する集団を作る」という
ユニテリアン運動の指導者で衆議院副議長も勤めた、
僕の祖父の盟友です。
祖父は沖野岩三郎といって、キリスト教の牧師を辞め、
明治末年の「大逆事件」を題材とした長編小説「宿命」で
文壇デビュー。
大正期に流行作家に転向したという、
まさに「40歳から進化」した変わり者です。

ユニテリアン運動は、当初、福沢諭吉も関連していたくらいで、
やがて日本は「科学的?国家主義」思想に蹂躙されて、
軍国専制主義に走ってしまうのですが、
20世紀の宗教史ばかりか社会運動史に残る
時代を象徴するユニークな自由思想であったようです。
このコラムは、ユニテリアン運動の解説書ではありませんので、
内ヶ崎さんと祖父の話は割愛しますが、
100年前に、内ヶ崎さんは
ベルクソン講演の沸騰ぶりをこう伝えています。

「今日、欧米諸邦に於いては、ベルグソンならざれば
何ものをも解釈せられずといふが如き有様である。(略)」
「最初ベルグソンの哲学は、殊に英国において持て囃された。
昨年の5月オックスフオード大学では
彼を招いて二回の講演を聴いた。
余もその機会を得たのである(略)」
「進化は一種の運動である。(略)
ヴィクトル・ド・フリースという和蘭の
植物学者はダーウインに反対して立った。(略)
彼は夕桜草(イブニング・プリムローズ)の花の姿を注視して、
一日に幾度となく変化するこの花の運動に
驚嘆せざるを得なかった。
彼はダーウインの漸進的進化論に対して
躍動的進化論を唱へ出した。
彼の説に従えば宇宙の万象は悉く躍進的に進化するのである。
ベルグソンの生命観はこの植物学者の進化論と
多くの共通点を有するのである」

どうでしょうか? 100年前の新思潮としての
ベルクソン哲学の人気が伝わってきませんか?
“大いなる精神エネルギーが宇宙万物を進化させる”
とする創造的進化論も、
宗教、宗派、科学、哲学を統合するユニテリアン運動も、
当時、勢いを増した唯物論、進化論、無神論に抗する
新しい「いのち学」として全世界から脚光を浴びていたわけです。
もちろん、社会ダーウィニズムの信奉者で、
のちに国家強権主義を提唱した
加藤弘之(東京大学初代総理)などからは批判も相次ぎました。
「宇宙の本体は物と力である。
(略)宇宙には偉大なる物があって
万物を支配するというところに
形而上学の大いなる迷見がある。(略)
宇宙の近頃、ベルグソンといふ形而上学者が出て、
欧州でも盛んに持て囃されてゐるやうであるが、
此れは余程不思議のことと思ふ」と。

20世紀初頭とは、様相が違いますが、
21世紀のいま、医学者、心理学者はもとより、
物理学者、宇宙科学者も含めて、
また100年を経て、身・魂・心の人間丸ごとが
「いのち学」として見直されてきたことは、
とても興味深い現象と思いませんか?
「40歳から魂を磨く」「40歳からは古典名著を読む」とは、
場当たりではなく、あなたに、等身大の「いのち学」を
設計するパワーをもたらすことはいうまでもありません。


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2007年7月2日(月)

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