旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第18回
バルセロナで知った「余裕のある生き方」

海外を旅すると、嫌でも日本との違いを意識させられます。
私の初めての海外旅行は1988年、ヨーロッパへの自由旅でした。
初めての海外旅行は強く印象に残るものですが、
二十歳の若い感受性を持っていたわけですから、なおさらです。
特にスペインやフランスでは、日本との違いを強く感じましたね。

その旅では、パリ、バルセロナ、ローマ、チューリッヒと
鉄道で旅して回ったのですが、ひょんなことから、
バルセロナに思ったより長く滞在することになりました。
ある程度の日数を同じ街で過ごすと、暮らしているような、
感覚になってきますよね。
バルセロナの人たちの生活が見えるようになってきました。
今では変わってしまいましたが、その当時はまだ、
昼食の時間を長く取るシエスタの習慣が残っていました。
そのシエスタに象徴されるように、バルセロナというところは、
東京や大阪とは時間の流れが明らかに違うんですね。
バルセロナが地方都市だというのもあるかもしれませんが、
パリでもそれは感じましたね。言葉にするのは難しいのですが、
一言でいえば、社会の余裕のようなものでしょうか。
あくせくしてもいいことはないよ、
明日は明日で何とかなるさ、肩の力を抜けよ、
と言われているような。

ヨーロッパは階級社会で、その中に諦めの文化があることなどを、
後で知りましたが、その時に受けた彼らの暮らし振りは、
強く心に残りました。
私は今とても忙しい日々を送っていますが、
そんな中でも気持ちに余裕を持つことができるのは、
あの時の旅の賜物かも知れません。
経済成長だけが価値あるものだと思われた時代は
とっくの昔に過ぎ去りました。
10数年も前にそのことを学べたのは、
とてもラッキーだったかも知れません。

旅をするときは心がオープンになっていると言いますから、
余計にいろんなものを吸収します。
それが生き方に影響するものだったとすると、
その旅の「おトク度」は計り知れないものがあります。


←前回記事へ 2003年5月31日(土) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ