旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第85回
旅行会社がバタバタ潰れた時代

90年代後半から2000年にかけて、
旅行会社がバタバタと倒産した時期がありました。
当時は海外旅行者が毎年100万人単位で増えており、
テロの影響もまだありませんでした。
傍から見ると、旅行業界の経営環境は悪くないように
見えたかもしれません。
しかし、内情は違いました。

90年代といえば、日本経済がデフレの時代へと入っていきましたが、
旅行商品はそれを象徴するものでした。
90年代に入ってすぐ、ジェットツアーがアメリカのツアーを
10万円を切る値段で売り出して話題を呼びましたが、
その後、値段はさらに下がり、
今では夏場でなければ5万円以下のツアーもザラです。
航空券も同じく、急激に値下がりました。
80年代の後半までは、ヨーロッパへの航空券といえば、
真冬のオフシーズンでも、最低15万円前後はしました。
もちろん、乗り継ぎ便で。
しかし、今では6、7万円代の航空券も珍しくありません。

値下がりの理由は、他の多くの業界と同じです。
不況による消費者の買い控え、業界内の激しい顧客獲得競争、
そして商品情報の普及です。
情報誌や広告で、複数の旅行会社の商品を比較できるようになると、
買う側はより安い方に流れる。
それなら、自社の商品を買ってもらおうと、他社より安く売る
旅行会社が出てくる。そして、さらにそれより安く、
といった業界内での激しいダンピング競争が起こったわけです。
私のような書き手が、安く賢い旅行商品の購入方法を
一般消費者に広めていった面もあるでしょう。

売値が下がっても、経費を下げる術は見当たらない。
当然、利幅はどんどん小さくなっていく。
一方で、旅行者は増えていく。結果、忙しいだけで儲からない、
旅行業界はそんな状態になっていったわけです。
そんな中で競争に敗れた旅行会社が倒産していきました。
航空会社やホテルが倒産するよりも、旅行会社が潰れる方が、
実は一般旅行者が被害を受けるケースは多いのです。


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