旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第88回
旅行会社は倒産しにくくなった!?

旅行会社が倒産すると困ってしまうなどとお話すると、
予約をためらうかもしれませんが、
一時期に比べると倒産の件数は減っています。
一時期というのは90年代の後半ですが、
ここ数年、大規模なテロ事件やSARSの流行などで
海外旅行者が大幅に減るケースが多いにもかかわらず、
倒産の件数が減っているのは不思議な気がするかもしれません。

その理由のひとつは、旅行会社の経営体質が変化してきたこと。
いわゆる「薄利多売」に陥り、その結果として、
倒産件数が増えることになった。その反省から、
やみくもに取扱人数を増やすのはよそう、
現在の顧客を大切にし、その中で利益を生み出すしくみにしよう、
そういう考え方をするエージェントが増えたといわれます。
旅行会社の大半は中小のエージェントですが、
その中に、そういう方針をもつところが多くなったわけです。

もちろん、ギリギリの線で
倒産を免れている会社があるかもしれない。
90年代後半の淘汰の時期に、危ないところは消えてしまった。
そんな見方もできます。
そして、インターネットの急激な普及も
業界に新たな可能性をもたらしました。
東京・高田馬場にコスモエアーシステム(CASツアー)という
エージェントがあります。
ここが取扱う商品は、成田発の格安航空券のみ。
20人足らずの社員数で、年間20億円を売り上げています。
社長の鎌田治男氏は、これ以上、販売規模も従業員も増やさず、
確実に利益を得ていく。無理して規模を拡大する気はない。
そんな経営方針を語っていました。
従来の売上至上主義から脱した典型的な例ですね。

そして、CASツアーのもうひとつの特徴は、
広告・宣伝がインターネットのみだという点です。
JTBや日本旅行などのネームバリューのある大手旅行会社と違い、
中小のエージェントは宣伝・広告をしなければ、
お客が思うように増えません。そこで、新聞や雑誌に出広したり、
パンフレットを刷ったりするわけですが、
利益率の低い彼らにとって、その費用は確実に経営を圧迫します。
しかし、インターネットでの販売なら、
ウェブサイトのメンテナンスなどの必要経費を除けば、
広告・宣伝費はゼロにすることも可能です。
人件費の節約にもなるでしょう。

ホームページ上に割安な航空券をズラリと並べ、
お得意さんにはメールマガジンで商品情報を流す。
広告・宣伝費と人件費。経営を圧迫する2つの経費を節約できれば、
利益を確保することはずいぶん簡単になります。
引いては、それが旅行商品の値下げにもつながってくるわけです。
現にCASツアーは、割安な格安航空券を販売する旅行会社として、
知る人ぞ知る存在です。

事業規模は大手に比べれば小さいものですし、
より多くの顧客を持つ旅行会社ではこういう経営方針は持てない。
すべての旅行会社がインターネット販売のみになってしまったら、
旅行店舗がなくなるわけで、それはそれで困ります。
ただ、新しい事業形態として
CASツアーのような存在が出てきたのですから、
こういうところも上手に活用したいところです。
インターネットでアクセスしてみるだけで商品を検索できる。
そのメリットを享受しない手はありません。


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