旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第117回
現地で食べるから美味しいわけで

今年は米が不足するそうです。
「米不足」といえば、思い出しますね10年前を。
タイ産の米を大量に輸入したにもかかわらず余っていまい、
結局は捨ててしまう人が多かった。社会的な話題にもなりました。
今年は、1993年当時のような状況にはならないと言われています。
当時の経験があり備蓄が進んでいますから、
米不足をタイ米で補うという作戦がとられることはないと思います。

捨ててしまった人が多かったということは、
不必要なタイ米を大量に輸入してしまったということです。
完全に当局の作戦ミスでしたね。
「戦時中はたくさんの人が飢えていた。贅沢いわずに食べろ」、
「上手に料理するとタイ米だっておいしい」。
そんな正論もありましたが、説得力には欠けました。
今の日本で戦時中のことを語っても事情が違います。
タイ米をおいしく食べるために、タイ料理をつくってはどうか。
あれほど辛くて、匂いのきつい料理を日本で毎日食べるのはきつい。
たまに外で食べるのはおいしいですが、
家庭で毎日食べられるものではないと思います。
そもそもお米にこだわったのが間違いのような。
パンでも、パスタでも、代用できる食べ物はある気がします。

食べ物には現地で育ってきた歴史があります。
タイ米の独特の匂いやパサパサした食感が、
日本では受け入れられなかったわけですが、
タイで食べると、それが全く気にならない。
香辛料の効いた料理に疲れた舌を休ませてくれる感じさえします。
ビールだって、辛い料理を流し込みやすいように
タイ風にアレンジしてあるわけです。
逆にアイルランドのギネスビールをタイで飲むのはヘビー。
ワインも、あの暑さと湿気では品質管理が大変でしょう。

旅先でおいしかったから買ってきたけれど、
家で口にしてみたら、現地で食べたほどの感動はなかった。
私もそんな経験、つまりは失敗が何度もあります。
考えてみれば、日本で食べてもおいしいものは
すでにスーパーに溢れているわけです。
現地の気候・風土の中で食べるからおいしい物がある。
旅先での食いしん坊は、永遠にやめられそうにありません。


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