弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第94回
代金を払ってもらえない

代金を払ってもらえない、
貸したお金が返ってこない。
そういうときに、弁護士に取立てを依頼するというのは、
以前からよくありました。

最近の不況を反映して、
このような相談も増えています。

以前は、代金不払いは一時的なもので、
相手が事業を継続していけば、
分割で支払っていくことが可能なことが多く、
分割払いで和解するケースがほとんどでした。

最近のケースの特徴は、
代金不払いが発生したときには、
相手は、1社だけでなく、
何社に対しても支払えなくなっており、
事業が行き詰っていることが多いというものです。

以前は、売上げが落ちたとしても、
一時的な経済変動によるもので、
しばらくすればまた元に戻るということが
期待できる経済状況でした。

しかし、最近は、
売上げが落ちているのは、
一時的な経済変動ではなく、
その業界、あるいは、取引の相手に原因があり、
売上げが落ち始めると、
相手が余程の努力をしない限り、
売上げの回復が期待できない経済状況にあります。

そこで、最初は、1社に支払いを待ってもらい、
業績が回復したら、そこに支払おうと考えるのですが、
次の月には、さらに売上げが減って、
また1社に支払いを待ってもらうこととなります。
それを繰り返していくうちに、
2社、3社と代金を払わない取引先が増えていってしまい、
事業が破綻していってしまうのです。

お金を貸して返ってこない場合も、
同じ仕組みです。
借りる方はお金が足りないから、
お金を借りるのですが、
売上げあるいは収入が増えなければ、
返すお金はできません。
既に、お金を借りている場合には、
一時的に他からお金を借りてしのいでも、
次の月から返すお金は増えてしまい、
またお金が足りなくなってしまいます。
こういうことを繰り返すうちに、
どこにも支払いが不可能となってしまっています。

今の時代、物を売るのも難しいのですが、
物を売った代金を回収することも、
以前より難しくなっています。
物を売るのも、お金を貸すのも同じです。

お金のない人からは、
どんなに優秀な弁護士も
お金を払ってもらうことはできません。
それを踏まえて、お金を貸すとき、
物を売るときは、取り逸れのないよう
相手の経済状況をよく検討することが必要です。


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