弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第96回
和解勧告に従わないと不利になるか

新聞やテレビの裁判報道で、
みなさん、裁判所から和解勧告がなされた
というニュースを耳にしたことがあるでしょう。

裁判をしてみると、
裁判所から和解で解決したらよいのではないか
という和解勧告がなされる場合があります。

この和解勧告について言うと、
特に法律上の根拠はありません。
したがって、一般に言われているような
和解勧告に従わないと裁判で
不利な判決がなされるということは
法律で決まっているわけではありません。

実際も、裁判官が提案した和解勧告に
従わなかったからといって、
勝てる裁判が負けるということにはなりません。

裁判官は、判決に一方を勝たせた理由を
書かなければなりませんし、
裁判の当事者は、判決に不服があるのであれば、
控訴することもできます。
だから、裁判官は自分の出した和解勧告に
一方の当事者が従わないからといって、
そちらを負けさせるというわけには行かないのです。

裁判官が自分に従わない方を
負けさせるような判決ばかり書いていたら、
控訴審で、その裁判官の判決は
ひっくり返されてしまいます。

だから、裁判官から
和解勧告があったからといって、
必ずしもそれに応じる必要はないのです。

和解勧告がなされたら、
和解を蹴ったら不利に扱われないかと心配するのではなく、
判決になった場合に
勝つ見込みが高いのか、低いのか、
判決で勝ったらどうなるか、負けたらどうなるか、
裁判官の提案している和解の内容に
合理性があるのか、
裁判の相手との今後の関係など、
いろんな要素を検討して、
和解勧告に応じるかどうかを
自分の弁護士と相談して、
判断すればよいのです。


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