弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第27回
行方不明の借主相手の解除

貸主が、賃貸借契約を
契約違反を理由に終了する解除をするためには、
解除を相手方に、文書や口頭で、
伝えなければなりません。

解除のような重要な事項は、文書で、
しかも、相手に届いたことを証明してくれる
内容証明郵便ですることをお勧めします。

しかし、相手が行方不明では、
契約の解除を伝えることができません。
こういうケースでは、
裁判所を利用する必要があります。

「意思表示の公示送達」という制度を利用すれば、
行方不明の相手に対し、
契約解除の意思を伝えたこととなります。
この制度は、裁判所が行方不明の相手を
探してくれるのではなく、
裁判所に書類を2週間掲示して、
相手に伝えたことにするものなので、
行方不明の相手は解除されたことは知りません。

借地や借家の賃貸借契約の解除の場合、
公示送達を利用して、
契約の解除をしたとしても、
借主は知らないので、
任意に土地や建物を返してくれはしません。

そこで、借主が行方不明になった場合には、
借主に土地や建物を返せ(明渡せ)という判決を取って
強制執行までする必要があります。

この行方不明者を相手にする裁判手続を
「公示送達による裁判」と言います。
意思表示の公示送達と言葉は似ていますが、
別な手続なので間違わないようにしてください。

ご質問のケースでは、
行方不明となった借主を相手に裁判を起こして、
公示送達による裁判で、判決を取り、
その判決に基づいて、
裁判所の手続に従って、借主の建物を壊し、
土地を明け渡してもらうことができます。

裁判費用や建物を壊す費用については、
借主が見つかれば後で請求することができますが、
全部貸主が立て替えて行なう必要があるので、
実際上は、貸主が負担することとなります。


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2005年1月13日(木)

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