弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第92回
大学大倒産時代到来

みなさん、大学が経営に行き詰まり
民事再生手続の申立をしたニュースは
ご存知だと思います。

既に18年前の段階で、
18年後の大学受験世代の数はわかっており、
18年前よりも少子化になることは
わかっていました。
即ち、大学市場は縮小することが
予想されていたのです。

ところが、バブル崩壊後、
経済社会において企業倒産が相次ぐ中、
なぜか、大学は増えていきました。
特に増えていったのが、地方における大学です。
これは、バブル崩壊後、地方の活性化に、
大学を利用したからです。

大学を作れば、
地元に若者が残るだろう
という考えではなかったかと思います。
あるいは、他地域から若者が集まることにより、
地元経済に貢献することとなる
という思惑もあったかもしれません。

その考え方自体は間違いではないでしょう。
しかし、地方には、既に大学があり、
その地方の大学は、
例えば東京や大阪・京都といった
大都市の大学に学生を奪われる
という状況にあったはずです。

そこで、ただ、大学を作っただけでは、
学生が集まらないのは目に見えています。
本来であれば、ここに思いを巡らせて、
どのくらいの能力を持った学生を、
どのような教育をして、
他の大学と差別化して、
学生を集めるということをシビアに考えて
大学を設立するところです。
しかし、そういうことが
あまりなされないままに
大学が次々と設立されてしまったようです。

別に、大学に参入するのが民間企業であれば、
倒産した大学に入学してしまった学生は
可哀想ですが、
甘い見通しで参入した結果倒産しても、
社会的にはあまり問題ではありません。

しかし、新たに参入した大学は、
地方自治体が税金を提供して設立されており、
国から補助金などを受けて運営されています。
即ち、みなさんの税金が大学に入っているのです。
新設大学だけでなく、
既存の私立大学にも私学助成金(補助金)
という形で税金が入っています。

したがって、大学が倒産すれば
投入された税金が無駄になってしまいます。
「少子化ってわかっているのに、
 大学を新設するなんてばかだな」なんて、
大学の倒産を笑っている場合ではないのです。


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2005年9月13日(火)

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