弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第128回
ライブドア株で損をしたら

HIQを読んでいる方は、
中国株の取引をしている方が多いでしょうから、
ライブドア株で、損をしたという方は少ないかもしれません。
一般に、株取引の損は自己責任ですから、
会社にも、経営者にも損害賠償することはできません。

しかし、報道にあるとおり、
ライブドアとその経営者が、
虚偽の発表で株価を吊り上げたり、
利益の付け替えをして粉飾決算により
利益が上がっているように見せたりしていたというのであれば、
株を購入した時点の株価は
違法行為により作られた見せ掛けのものであり、
真実がわかって株価が下がった場合には、
その差額を損害として損害賠償できる可能性があります。

西武鉄道が有価証券報告書に
虚偽の記載をしていたことが発覚したことで
上場廃止になったことから損害を被ったと
損害賠償請求をしたケースと似たような理屈となります。
(まだ、請求が認められたわけではありません。)
事実関係は、今後の捜査及び刑事裁判で明らかになるので、
それから、損害賠償請求をするかどうか検討すればよいと思います。

粉飾決算をしていた場合には、
証券取引法に基づく損害賠償請求もできます。
粉飾決算の時期が、平成16年12月1日以降だと、
証券取引法の改正により、
会社、役員、監査法人に対する
損害賠償請求が簡単になっているのですが、
今回の容疑など報道されている事実は、
証券取引法改正前のことのようなので、
一般的な「不法行為」として、
あるいは、改正前の証券取引法に基づき
損害賠償請求をするということとなります。

損をした株主全員が、
会社や経営者、監査法人を相手に損害賠償請求をしたら、
損害額はかなりのものになるでしょうから、
仮に勝っても全額戻ってくるとは限りません。
しかし、経営者はお金持ちとして
マスコミに取り上げられていたし、
会社も資産があると言われていますから、
それが本当ならば、
裁判で勝てばある程度は回収できると思います。

株主が損をした額と、
会社に残っている資産や経営者の資産、
監査法人の資産などを比べて、
後者が多ければ全額回収できることとなり、
前者が多ければ一部しか返還されないということとなります。

これだけ事件が有名になると、
1人の株主だけに賠償をするということはないでしょうから、
やるのであれば、今回の騒動で損をした株主同士連携を取って、
集団で訴訟を起こした方がよいのではないでしょうか。


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2006年2月7日(火)

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