弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第178回
負担するのは借主か?貸主か?

賃貸物件を長年使用したことにより生じる
通常損耗の修繕費は、
借主が負担すると
契約書に書かれていた場合は、
契約書どおり
借主が負担することとなるのか、
それとも、
それは貸主に有利すぎるから
契約として無効で、
貸主が負担することとなるのか、
という話をしていました。

この点について、
最高裁判所は、
通常損耗の修繕費が
借主の負担となる契約は、
借主にとって不利であり、
貸主が借主に対し、
わかりやすく説明して、
借主が十分に理解した上で
契約をしなければ、
通常損耗について
修繕費を借主が負担する
という合意は成立していない
という結論を示しました。

どういうことかというと、
賃貸借契約書に、
「壁・天井のクロス、床シート、
畳などの通常損耗は借主が負担する」
と書いてあったからと言って、
借主の負担となるわけではないということです。

東京都では、不動産業者が仲介して
賃貸借契約を交わす際に、
重要事項として、

(1)退去時の通常損耗等の復旧は、
貸主が行うことが基本であること、

(2)入居期間中の必要な修繕は、
貸主が行うことが基本であること、
を説明し、

その上で
(3)賃貸借契約の中で、
借主の負担としている
具体的な事項を
説明しなければならないとされています。

これらについて、
わかりやすく説明した上で
契約しなければ、
通常損耗の修繕費について
借主が負担するということにはならないのです。

しかし、逆に言えば、
これらをわかりやすく説明した上で、
借主が、通常損耗の修繕費について
借主が負担するということを
納得して契約をすれば、
借主がこれらの費用を負担することとなります。

賃貸ビルや賃貸マンションのオーナーの方は、
よく検討しておく必要があると思います。


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2006年8月3日(木)

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