弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第192回
下請はつらいよ

前回、下請などの中小企業に対する
大企業の弱い者いじめは
「独禁法」違反になるというお話をしました。
前回は、三井住友銀行が
融資の条件として
金融商品を購入させたことを例に挙げました。
他にも、大手量販店が、
納入業者に、改装費用や人を出させたり、
元請が理由もなく、
最初に約束した代金を
減額して払ったりすることも、
「優越的地位の濫用」として、
「独禁法」に違反します。

では、現実社会から、大企業による
中小企業いじめがなくなるかというと、
なかなかそうはいきません。
「独禁法」による中小企業いじめ、
即ち「優越的地位の濫用」の
取締をするのは、公正取引委員会です。

しかし、公正取引委員会は、
全ての企業の取引を
いちいちチェックして、
「独禁法」違反があったら、
摘発して取り締まる
ということはしてくれません。
被害者の告発があって、
調査を開始するのがほとんどです。
大企業側の内部告発が
あることもあるとは思いますが、
それは少ないでしょう。

公正取引委員会は、
告発者の名前を隠してくれます。 
しかし、優越的地位の濫用は、
ある大企業が、
ある中小企業に対して、
弱い者いじめを行なっているということです。
すると、公正取引委員会が、
告発を受けて調査をすれば、
大企業側では、
公正取引委員会が調査している
取引の相手である中小企業が
告発を行なったと考えるのが普通です。

もちろん、大企業は、
公正取引委員会に
告発したことを理由として、
取引を拒絶することはありませんが、
後々別な理由で、
取引を打ち切らないとは限らないのです。
中小企業は、どういう理由であれ、
取引を打ち切られてしまえば、
経営に大打撃を受けてしまいます。

こういう理由から、
大企業に無理難題を押し付けられても、
公正取引委員会に告発することもなく、
我慢している中小企業は多いのです。
多数の取引先の中小企業に
同じような弱い者いじめを
しているようなケースでは、
誰が告発したかを
特定することは難しいので、
そういう場合は、告発がしやすいです。


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2006年9月21日(木)

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