弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第287回
お金のない人を信じる

前回、お金のない人の約束は、
絵に書いた餅で、役に立たないという話をしました。

みなさんは、善良な方ばかりでしょうから、
お金のない人の約束を信じないなんて、
「高島弁護士は何て人間味のない冷たい人なのだろう」
と思ったかもしれません。
確かに、弁護士は、
最悪のケースをいくつも見ていますし、
最悪のケースを想定してお話しするので、
人間味がないかもしれません。
しかし、僕は、お金のない人の約束は、信じるな
と言っているのではなく、
役に立たないと言っているのです。

お金のない人に対しては、
いくら判決を取っても、
強制執行ができません。
差し押さえる財産がないからです。
判決は、相手の財産を差し押さえるために取ります。
相手に、お金がない、
即ち差し押さえる財産がなければ、
判決によって、強制的に取り立てることができないのです。
だから、お金のない人の約束は、
紙に書いてもらっても役に立たないのです。

世の中は、もっと悪い人がいて、
自分名義の財産がなければ、
そもそも裁判をやってこないだろうし、
仮に相手が裁判を起こして自分が裁判で負けたとしても、
相手にお金は取られないと考えている人もいます。
他人を信用するのは、
人間として大切なことですが、
それはお金が絡まないときの話で、
お金が絡む場合には、
慎重にした方がよいと思います。
どんなに性格の良い人でも、
収入がなくなったり、
借金で首が回らなくなったりすれば、
お金を払うという約束は守れないのです。
ましてや、世の中、
前述のような悪い人がいるのですから、
なおさらです。





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2007年9月6日(木)

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