弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第304回
遺言書では、遺留分に注意

僕も本を出しているくらいですが、
遺産分割の相談、依頼が増えています。
裁判所への遺産分割の事件に関する申立てが増えているようです。

よく言われる、相続、遺産分割で、
残された遺族が揉めないようにする対策は、
遺言書を作るということです。
ところが、
せっかく遺族が揉めないようにと作った遺言書がもとで、
遺族が揉めるケースも相次いでいます。
一番多いケースは、
妻や娘あるいは長男といった相続人の1人に、
全ての財産を相続させるという遺言書です。

法律上遺言書どおりになれば、問題は起こりません。
しかし、民法は、
配偶者や子供に、遺留分という最低限の取り分を認めています。
配偶者や子供の遺留分は法定相続分の2分の1、
即ち4分の1です。
だから、全ての財産を1人の相続人に相続させるという遺言書は、
当然、他の相続人の遺留分を侵害することとなりますから、
遺言書を書いたにもかかわらず、
その遺言書を巡って、
遺族の間で紛争がおきてしまうのです。

例えば、相続人が妻1人子供2人の場合、
妻に、財産の全てを相続させるという遺言を書いたとすると、
子供2人には、8分の1ずつ合わせて
4分の1の遺留分請求権があります。
遺産が、自宅1億円、
現預金1000万円だけだったとすると、
妻は、子供たちに遺留分として、
2750万円も支払わなければなりません。

すると、妻は、
子供たちに遺留分のお金を払うために
自宅を売らなければならないということにもなりかねません。
最初から、奥さんと、自分が死んだら、
自宅を売って小さなマンションでも購入して
住むという話でもできていればよいのですが、
そうでなければ、
高齢になってから自宅を売って
引っ越すというのはなかなか大変なことです。

こういうケースでは、
どうせ奥さんが亡くなったときには、
子供たちの遺産となるのだから、
自分が亡くなったときには、
遺留分を行使しないという約束を子供たちにさせて、
遺留分の放棄をさせておくとよいと思います。

遺留分の放棄は、
家庭裁判所に申立てをする必要があります。  
こういうケースばかりでなく、
遺言書を作成するときには、
他の相続人の遺留分を考慮する必要があります。
なお、遺留分を請求する権利の正式名称は
遺留分減殺(げんさい)請求権と言います。





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2007年11月6日(火)

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