弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第364回
死亡直前に売却された

相続の相談を受けると、
たまに、亡くなった方が持っていた不動産の名義が
変えられていることがあります。

もちろん、死亡直前に不動産を売却するなんて不自然なので、
死亡した本人の意思ではなく、
誰かが勝手に名義を変えてしまったのではないか
という疑いがあります。

このようなときに、
どのように調査するかというと、
まず、法務局に行く必要があります。
法務局は、登記所などとも呼ばれています。

まず、この法務局で、
登記の申請書類を見せてもらいます。
登記の申請書類には、
登記の委任状と売買などの登記の原因が書かれた書類があります。
これらの書類を見て、
これらの書類になされた署名が、
亡くなった方の署名なのかを確認するのです。

署名が本人のものでないということであれば、
その登記が勝手になされたことを理由に
無効になる可能性が高いです。
法務局では、登記の申請書類を見せてはくれますが、
コピーさせてはくれません。

そこで、デジタルカメラなどを持って行き、
筆跡の部分などを写真に撮ってくる必要があります。
そして、登記申請書類の筆跡と
年賀状などの故人の筆跡を比較して、
亡くなった方が登記申請書類を書いたのかどうか確認します。

次に、仮に売買契約に基づき登記名義が変えられており
亡くなった方の筆跡だったとしましょう。
そのときには、代金がいくらだったのか、
代金が支払われているかを確認しましょう。
正式な売買で、代金が支払われていないのに
登記名義だけが変えられているのはおかしいからです。

代金が市場価格と比較して、
安すぎるかどうかもチェックする必要があります。
適正な代金が支払われ、
通帳にその額が残っていたというのであれば、
争いようはありませんが、
代金が不当に安い、あるいは
支払われていないということであれば、
争いようはあります。





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2008年6月10日(火)

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