弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第379回
育てなかった親の扶養義務は?

みなさん、子供のころ両親が離婚して、
父親に育てられて成人したところ、
離れて暮らしていた母親が体調が悪いので、
面倒を見て欲しいと言ってきたら、どうしますか?

離れて暮らしていたとしても親子なんだから、
面倒を見ますか?

それとも、
自分を捨てた親なんだから、
困ったときだけ頼ってくるなと見放しますか?

法律上は、親子であれば、
過去に親が子供と離れて暮らしていたとしても、
扶養の義務を負うのが原則です。

しかし、過去の判例では、
事情によっては、扶養しなくても良い
ということが認められています。 

過去の判例では、
子供が未成年のころに、父親が怠惰でわがままで、
ギャンブル好きで、気が向かなければ働かないことから、
妻(母)から離婚されて、
その後養育費も払っていなかったにもかかわらず、
体が弱ったと言って、子供に面倒を見て欲しいといったようです。
(しかも裁判まで起こしました。)

これに対し、裁判所は、
このような事情があって、体が弱ったといっても
働こうと思えば働けて、収入を得る方法があるのだから、
父親から子供への扶養請求は認められないと判断しました。

この判例では、
父親が働いて収入を得ることができるケースでしたので、
父親が全く働けなかった場合でも、
子供が未成年のときに子供に対し親らしいことをせずに、
かえって子供に苦労を与えたような事情があったときに、
子供は父親を扶養しなくても良い
という結論となるのかどうかはわかりません。

ただ、事情によっては、
親子でも、子供が親の扶養をしなくても良い場合がある
ということです。

また、仮に扶養義務を負ったとしても、親は大人ですから、
成人した子供は、
自分の生活を犠牲にしてまで扶養する必要はなくて、
通常の生活をしたうえで、
なお、経済的な余裕がある場合に負担すれば足りる
と考えられています。
今回は、みなさんからの質問を取り上げてみました。





←前回記事へ

2008年7月31日(木)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ