弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第409回
著作権の帰属は注意が必要

前回、有名音楽プロデューサーの
詐欺事件の原因についてお話しました。

今回は、詐欺の道具となった著作権についてのお話です。

著作権は、特許権と違って、登録がなくても成立するので、
手続きが簡便でよいように見えます。

著作権は、みなさんが、
単に絵を描いたり、文章を書いたりしただけで成立するのです。

しかし、著作権が争いとなると、
同じような絵や文章は、
どちらが先に書いて、どちらが真似をしたのか、
裁判で立証することはなかなか難しいです。

絵や文章が、出版されるなどして
公で取り上げられたという証拠でもあれば別ですが、
通常売れる前の絵や文章は、
個人のメモやスケッチブックに記載されているだけで、
そのメモやスケッチブックに書かれた日がいつかを立証することは
難しいです。

著作権は、その著作物が有名になれば、
収入を生み、財産的価値を持ちますから、
当然、売買の対象にもなります。

そのときに、買い手が、著作権が有効に成立し、
誰かのものを真似したものではないということを確認することは
なかなか難しいのです。

それに、著作権については、
不動産の登記のような登録制度があるのですが、
もともと著作権は登録がなくても成立する権利で、
登録するのに費用がかかることや
登録していなくても罰則がないことなどから、
実際の取引ではあまり利用されていません。

有名音楽プロデューサーは、これを利用して、
実際には売却してしまっているにもかかわらず、
著作権を自分が持っていると言って、
お金を騙し取ったようです。

これらのことから、著作権の取引については、
「著作権が売主に帰属していることを売主が保証し、
それに違反した場合は、売主は多額の違約金を支払う」
という条項を契約書には入れるのが普通です。

しかし、売主が違約金を支払えるだけのお金を持っていないと、
契約書でいくら違約金を取れることになっていても、
実際にお金は取れないので、あまり意味がありません。

著作権の取引には、このような難しい点があるので、
注意が必要です。


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2008年11月20日(木)

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