弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第570回
子供のいない人は遺言を

相続と言うと、子供同士の争いだから、
子供がいなければ関係ないと思っている方がいるかもしれません。

しかし、子供がいない場合、
相続人は、配偶者と両親、
両親が亡くなっていれば配偶者と兄弟となります。

配偶者と両親で相続する場合、
法定相続分は、配偶者が3分の2で両親が3分の1、
配偶者と兄弟で相続する場合は
配偶者が4分の3で、兄弟が4分の1です。

配偶者と両親には、いわゆる嫁と姑の問題があります。
万一のときまで仲が良いならよいのですが、
嫁姑問題があれば、
財産を巡る話合いなど円満にできるはずがありません。

仮に、表面的には円満な関係であったとしても、
財産を巡る話合いができるほど仲が良いかはわかりません。

これが、嫁と兄弟となると、
さらに、縁遠く、兄弟と会ったのは、
自分の結婚式と両親の葬儀のときだけということもありえます。

そんな相手と、奥さんが、
自分の家庭の全財産を明らかにして、
遺産分割協議をしなければならなくなります。

預金は、相続人全員の署名捺印がないと下ろせませんし、
不動産の名義も変えることができません。

そもそも、配偶者が自分の財産を相続する場合に、
扶養を必要としない親や
兄弟に遺産を分ける必要があるのかとも思いますが、
法律上は、両親、両親がいない場合は、
兄弟に相続権が認められているので、
何もしないと、
両親や兄弟が一部を相続することとなってしまうのです。

そこで、両親や兄弟に相続させたくないときは、
妻など配偶者に全財産を相続させる
という遺言書を書いておきましょう。

ただし、両親には、6分の1の遺留分があります。
この場合、遺留分相当額の遺産を
両親に相続させる旨の遺言を書くか、
遺留分を事前に放棄してもらう方法を取ればよいでしょう。

ただ、一般的には、両親の方が先に亡くなる可能性は高いので、
両親と配偶者のことよりも、
兄弟と配偶者のことに備えておいた方がよいでしょう。

兄弟には、遺留分がないので、
ご両親がいないときには、
配偶者に全財産を相続させる旨の遺言書があれば、
配偶者が遺産を巡って揉めたり、
嫌な思いをしたりすることはありません。

したがって、子供のいない人は、
遺言書を書いておいた方が良いのです。


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2010年7月22日(木)

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