弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第586回
お金持ちしか弁護士になれない根拠は?

以前取り上げた弁護士の卵である司法修習生
(正確には検察官と裁判官の卵でもあります)
の給与問題について、
最高裁判所が、弁護士会に対し、
「司法修習生の給与を貸付にしたら、
お金持ちしか弁護士(裁判官、検察官)になれない
と主張するなら、その根拠を具体的に示して欲しい」
と質問状を出しました。

弁護士会が直接的な根拠を出すのであれば、
一度、司法修習生の給与を貸付にしてみて、
貸付にする前と貸付にした後で
司法修習生の本人の資産と親の収入・資産の状況の調査した結果
を証拠として提出するということになるでしょう。
そうすれば、貸付にした結果、
お金持ちの割合が増えているかどうかがわかります。

しかし、まだ、貸付の制度は始まっていないので
今の段階で、弁護士会が給与を貸付にしたら、
お金持ちしか弁護士になれなくなったというデータを
出すことはできません。

そこで、例えば、今の段階で、給与を貸付にしたら、
弁護士になるのを諦めるか
という仮定の質問でアンケートを取って、
それなら諦めるというアンケート結果を出すことも考えられます。
しかし、それは仮定の質問に関する回答なので
実際に貸付にしたときに諦めるかどうかはわかりません。

特に、法科大学院に入った学生は、
司法修習生の給与が貸し付けになろうが、
法科大学院に入った以上、弁護士を目指すはずで、
諦めるとは思えません。

また、僕は、お金持ちしか弁護士になれなくなる理由としては、
たった1年間の司法修習生の給与を貸付にするか
という問題より、
法科大学院2、3年の学費と
大学院在学中の生活費の負担の方が重いと思うのです。
だから、既に、法科大学院の制度を導入した時点で、
以前の司法試験と比べて、
弁護士は裕福な人がなっている割合が高くなっているのではないか
と思います。

とすれば、法科大学院制度を導入した後で
司法修習生の給与を貸付にしたところで、
急に司法修習生に富裕層が増える
というような状況にはならないと思っています。

そこで、弁護士会が最高裁判所に対し、
どういう根拠を出すのかと楽しみにしていましたが、
民主党は、司法修習生の給与を継続し、
貸付にすることは止めるようです。

僕も、国がお金を出す余裕があるのであれば、
司法修習生に給与を出した方がよいとは思っています。
しかし、今の国にそんなに余裕があるのでしょうか。


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2010年9月21日(火)

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