弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第636回
お見舞い申し上げます

地震及び津波の被害に遭われた方は、
大変な思いをされていることと存じます。
心よりお見舞い申し上げます。

さて、こんなときにどういうコラムを書くべきかは、
迷うところではありますが、
法律家なので、地震に関する判例を取り上げます。

マンションでもアパートでも、
店舗でも事務所でも同じですが、
地震で建物が壊れてしまって使用できない状況になると、
賃貸借契約は終了します。

この際、貸主が立退料を支払ったりする必要はありませんし、
借主が何かペナルティを支払う必要はありません。

ただ、この地震で建物が壊れてしまって、
使用できない状態かどうか
という点は争いになる可能性があります。

建物が修繕すれば使用可能ということだとすると、
貸主は修繕義務が発生することとなるからです。

阪神、淡路大震災の際も、
この点が争われた判例があります。
さらに、関西では、敷金や保証金の一定割合を返さない
といういわゆる敷引特約が付けられており、
震災で建物が使用できなくなって契約が終了した場合も、
この敷引特約が有効かということが争われました。

東日本でも、保証金の償却ということで、
保証金を返すときに一定割合を控除して返す
という条項があるので、
今回の震災でも、そのような争いが起きてくるかもしれません。

結論を言いますと、最高裁は、
敷引特約は、礼金として
必ず返還しないという合意がなされた場合を除いて、
災害で契約が終了した場合は、適用がないとしました。

契約締結の際に、
礼金や権利金などを貸主が受け取っている場合には、
敷引特約は、礼金としての性格はないでしょうから、
適用はないということになるでしょうが、
礼金や権利金などを一切受け取っていない場合は、
敷引特約は礼金や権利金の意味を持つとも言えるので、
一定の割合を控除できると考えられなくもありません。

この点、借主が個人か事業主かで、
消費者契約法の適用があったり、なかったりしますので、
最高裁判決が出ているからと言って、
争いようがないというわけでもなさそうです。


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2011年3月17日(木)

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