弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第674回
裁判官は世間知らずだから

「裁判官は、世間知らずだから」
と思っている方も多いかもしれません。

一般的に、「裁判官は世間知らずだから」という言葉は、
「裁判官は、勉強ばかりしてきたので、
法律には詳しいけれども世間の常識をわかっていない。
だから、こちらの主張を理解してくれない。」
という意味で使われることが多いと思います。

しかし、裁判官がこちらの主張をわかってくれないのは、
裁判官が世間知らずだからでしょうか。
ここを疑ってかかる必要があります。

まず、裁判官がわかってくれない
というこちらの主張については、
明確に、はっきりと、丁寧に、
わかりやすく主張されているでしょうか。

裁判では、自分の主張は、
書面にして出す必要がありますが、
この書面において、明確に、はっきりと、丁寧に、
わかりやすく書かれていなければ、
裁判官が世間知らずかどうかにかかわらず、
裁判官に伝わりません。

その主張については、
証拠や裏付けがあるでしょうか。

裁判では、相手が争っている場合、
証拠や裏付けがなければ、認められません。
 
本当に社会一般での常識であれば、
証拠や裏付けがなくても認められますが、
そのような事実が裁判で争いになることは少ないです。

裁判官がわかってくれないというこちらの主張は、
裁判において、
勝敗を左右するような重要な部分についての主張でしょうか。

裁判の勝敗にあまり関係なければ、
裁判では無視されたり、
あまり関心をもたれなかったりしても仕方がありません。

裁判官がわかってくれない主張は、
法律的には、許される行為でしょうか。

例えば、車を運転するときに制限速度以下で
スピード違反をしない人はほとんどいないとは思います。

しかし、だからと言って、
スピード違反をしても仕方がない
という主張を裁判所は受け入れるわけにはいきません。
裁判所は、法律に従って判断を下す機関だからです。

これらのポイントをチェックして、
全てきちんとしているにもかかわらず、
裁判官に理解されなかった場合は、
裁判官の判断がおかしいと思います。

しかし、大抵は、上記いずれかの事情によるもので、
裁判官が世間知らず
ということによるものではないと思われます。

「裁判官が世間知らずだから」
と嘆いていても裁判には勝てません。
世間知らずの裁判官にわかってもらうためには
どうしたらよいかということを考えて
対策を取る方が良いと思います。

世間知らずの裁判官なのであれば、
こちらの言うことを信用させるのは
簡単なのではないでしょうか。


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2011年8月9日(火)

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