弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第692回
兄弟にはない

前回、遺言書があって、
長男に対し、全ての遺産を相続させるという内容であっても、
次男、三男は、遺言書の内容を知ってから
1年以内であれば、
法定相続分の2分の1を遺留分として請求できる
という話をしました。

しかし、この遺留分減殺請求権
(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)は、
相続人の誰にでもあるわけではないので、注意が必要です。

相続人となる可能性があるのは、
通常、妻・夫などの配偶者、
子供、孫、両親、祖父母、兄弟、甥・姪です。

配偶者は、常に相続人となりますが、
孫は子供が先に亡くなっているとき、
両親は、子供や孫がいないとき、祖父母は、子供や孫もなく、
両親も先に亡くなっているときに相続人となります。

兄弟は、子、孫、両親、祖父母がいないときに相続人となります。
兄弟が先に亡くなっているときは甥姪が相続人となります。

この中で、亡くなった方の配偶者、
子供、孫、両親、祖父母には、遺留分減殺請求権がありますが、
亡くなった方の兄弟と甥姪には遺留分減殺請求権はありません。

そこで、相続人が兄弟(ABCD)しかいないような場合、
特定の兄弟Aに遺産を全部相続させるという遺言書があると、
他の兄弟(BCD)は、全く遺産を受け取れなくなります。

それから、両親も祖父母も他界して、子供がいない夫婦のケース。
遺言書を書かずに、夫が死亡すると、
妻と夫の兄弟が相続人になり、
遺産の4分の1が夫の兄弟に行くこととなります。

しかし、兄弟には、遺留分はありませんから、
「妻に遺産を全部相続させる」という遺言書を書けば、
遺産の一部が兄弟に行くこと、
兄弟と妻が遺産分割を巡ってもめることを防ぐことができます。

子供がいない夫婦の方は、
遺言書の作成を検討した方が良いと思います。

なお、配偶者、子供、孫が相続人となるときは、
遺留分は2分の1で、両親、祖父母が相続人となるときは、
遺留分は3分の1です。


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2011年10月20日(木)

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