弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第737
原状回復には「自然損耗」は含まない

賃貸借契約で、退去時には、
多かれ少なかれ必ず原状回復が問題となります。

そのときに問題となるのが、
壁のクロスやカーペットを
張り替えなければならないのかというものです。

壁のクロスはそうでもありませんが、
カーペットなどは長く使えば使うほど擦り切れて汚れて行きます。

借主は、原状回復として、
このカーペットを張り替える必要があるのでしょうか。

借主の使用によって、汚れて、擦り切れたのだから、
借主の責任で、張り替えなければならないとも思えます。

しかし、何かをこぼしたりして汚したり、
何かをひっかけて傷つけたりしたということであれば、
借主の責任で張り替えなければなりませんが、
ただ普通に長期間使用したことによって
擦り切れてきたということであれば、
借主は張り替える必要がありません。

というのは、賃貸借契約においては、
物の使用が予定されており、
貸主は通常の方法で物を使用することの対価として
賃料を受け取っているので、
判例上、通常の使用による損耗は、
借主は責任を負わなくてよいとされているからです。
この通常の使用による損耗を「自然損耗」と言います。

「自然損耗」については、
借主は原状回復をしなくてよいこととなっています。

ただ、入居のときに新しいカーペットが入っていて、
退出のときには新しいカーペットを張り替えるなどと
契約書に記載してあったような場合には、
裁判所で「自然損耗」であっても、
カーペットを張り替える必要があると
判断される可能性があります。

特に、借主が事業者の場合には、
契約書の内容通りになる可能性が強いので、
原状回復についてはどのように契約書で定められているかは
確認する必要があります。

貸主からすれば、借主が事業者の場合は、
原状回復について、カーペットも壁のクロスも
全部原状回復することを契約書に書いておいた方が
良いということになります。


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2012年4月12日(木)

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