弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第742回
薬のネット販売禁止は違法

現在、薬はビタミン剤などを除いて、
ネット販売が禁止されています。
この薬のネット販売の禁止は、違法かどうかが裁判で争われました。

第一審の東京地裁では、
薬のネット販売の禁止は合法というものでした。

ところが、最近出された東京高裁判決では、
薬のネット販売禁止は違法というものです。

そもそも、薬の販売の禁止は法律で決まっているのに、
違法か合法か、即ち、法律に違反しているかどうかが争われている
というのはおかしい、と思った人は鋭いです。

実は、薬のネット販売を禁止しているのは、
省令といって、厚生労働省が薬事法という法律を解釈して
作成した規則なのです。

今回の東京高裁の判決は、薬事法という法律には、
ネット販売を明確に禁止している規定がないにもかかわらず、
省令という厚生労働省が作成した規則で禁止をしているので、
薬のネット販売禁止は違法だと判断しています。

判決は、実質的な面でも、
ネット販売でも薬の副作用などの情報提供は可能なので、
対面販売に限る必要はないと判断しています。

しかし、薬事法の規定を読むと、
店舗以外では売るなと書いてあり、
対面販売が原則であるように読めます。

高裁判決によれば、ネット上の販売も、
店舗での販売ということなのかもしれませんが。

確かに、薬事法の規定では、第3類の医薬品は
ネットで売っていいけれども、
第1類、第2類の医薬品は
ネットで売ってはいけないとは書いていないので、
厚生労働省の規則による規制はやりすぎかもしれません。

こんなことを言うのは暴論ですが、
そもそも、風邪薬や胃腸薬は
家庭で置き薬として売られていたりしているのですから、
いちいち薬剤師が副作用などを説明して
売る必要はないのかもしれません。

ただ、ネットでは薬でもないものを
「〜に効く」とうたって販売されたりしていますし、
薬の偽者もうられたりしています。
薬のネット販売を合法とするのであれば、
そういう違法な業者を
きちんと取り締まる体制を整えることが必要となると思います。

厚生労働省がこの薬のネット販売禁止を違法とする
東京高裁に上告して争うのか、
ネット販売を合法と認めるのか、その点は注目ですね。


←前回記事へ

2012年5月1日(火)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ