弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第762回
簡単には追い出せない

HiQを読んでいるみなさんは
株式以外に不動産投資をしている方も多いと思い、
たまに不動産投資(主に不動産賃貸)の
リスクのお話をしています。
これまで、部屋が埋まらないリスク、
部屋が埋まっても賃料不払いリスクがあるという話をしました。

みなさん、借主が賃料を払わなければ
追い出せばよいと思われると思います。
その通りなのですが、法律上は借主が保護されているので、
追い出すのはなかなか面倒です。

まず、追い出すには、
借主との賃貸借契約を解除する必要があります。
そして、判例上、賃料は1回遅れただけでは
賃貸借契約を解除できないとされています。

普通の契約書には、1回でも賃料を怠ったら
賃貸借契約を解除することができると書かれています。

しかし、裁判になると、
1回だけ賃料の支払いを怠っているだけでは、
賃貸借契約の解除は認めてもらえないのです。

これは、契約書の記載からするとおかしな話なのですが、
最高裁の判例上、
「信頼関係破壊の法理」と言って、
賃貸借というのが長期的で、
貸主と借主の信頼関係を基礎とする契約だから、
信頼関係が破壊しているという状況でないと
賃貸借契約を解除できないとされているのです。

そこで、賃料の滞納は原則3か月分溜まらないと、
賃貸借契約は解除できないこととなります。

関西は違うようですが、関東では、
マンションなど住居の敷金は2か月が多いですが、
3ヶ月溜まらないと賃貸借契約を解除できないわけですから、
解除するときには、
敷金では未払い賃料は賄えないという状況になります。

オフィスや店舗だと、
まあ敷金・保証金は2か月ということはないでしょうから、
3ヶ月の未払賃料が発生してもまだ賄えるかもしれません。

ただ、住居と違って、
オフィス、店舗は原状回復費が発生しますから、
敷金保証金で賄えるかという点は違うリスクが発生します。

不動産投資(不動産賃貸)には、
賃料が不払いでも3ヶ月待たないといけない
というリスクがあるのです。


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2012年7月17日(火)

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