第70回
理想は徒歩通勤

私が理想とする通勤スタイルは、「徒歩通勤」です。
中国の田舎の炭鉱や工場に行くと、
朝はみんな敷地内にある住宅から歩いて出勤してきます。
同じ敷地内にある為、昼はみんな家に帰って、
家族と一緒に昼ご飯を食べます。

東京で働いている時に
「短い人生において、通勤時間ほど無駄なものは無い」
と思っていた私は、中国でのこの状態を見て、
非常にうらやましく思いました。
しかし、当の本人達は、親の代からそんな状態が続いており、
常識になっていますので、ありがたいとも何とも思っていません。

彼らと話していると、
「東京は地下鉄が網の目の様に張り巡らされていて、
乗り換えればどこにでも行けるんだろ。
更に、時刻表通りに電車が来るらしいじゃないか。
通勤が便利でいいなぁ」などと言われますが、
「あんた達の徒歩1分通勤の方が、よっぽどいいよ」
という感じです。

さすがに北京の市街地では、
そういう会社は少なくなってきましたが、
それでも、東京に比べたら、
街中に住んでいる人ははるかに多いと思います。
出退勤時の自転車の数が、まだまだ多いのがその証拠です。

しかし、北京の市街地が開発されるに従って、
一等地の住宅は取り壊され、
どんどん高層のオフィスビルが建ち始めています。
北京の昔ながらの住宅様式である、
四合院や胡同も取り壊しの対象になっていますので、
無くなる前に見ておきたい、という観光客の人が増えている、
という話も聞きます。

もちろん、新しく建てられるのはオフィスビルだけでは無くて、
マンションも建てられていますが、
それらの多くは国有企業の従業員の生涯収入を
はるかに上回る値段が付いています。
とても今までそこに住んでいた人達が
続けて住める様な値段ではありません。

中国では土地は国家のものですので、
そこに住んでいる人達は使用権を持っているに過ぎません。
国家から「どけ!」と言われれば、
すぐに立ち退かなければなりません。
国家の発展の観点から見れば、立ち退き交渉が無く、
早い速度での開発が可能となりますが、
先祖代々住んできた土地に愛着がある人にとっては酷な話です。


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