第94回
値段にも味にも雰囲気にも厳しい個人客

中国でレストランを開いて、
大きく儲けるならやはりマーケットが大きい中国料理です。
しかし、マーケットが大きいだけあって、
ライバルは多く、競争も激しいです。
料理がおいしいのは当たり前で、
それプラスアルファの付加価値が無いと、
お客さんは入ってくれません。

最近、北京で流行っているのは、いわゆる中華風では無く、
非常に洗練されたデザインの西洋風の内装の店舗で、
中国料理を出すレストランです。
こうしたレストランは、家賃が高そうな一流のビルに入り、
内装も非常にきれいで、料理もおいしいのですが、
値段は驚くほど安いです。
もちろん、その辺の街の食堂と比べれば高いですが、
それでも2人でお腹いっぱい食べて
100元(1,500円)ちょっとですので、
普通の会社員でも払えない金額ではありません。
こんなに低い客単価で毎月ちゃんと家賃が払えるのか、
他人事ながら心配になってしまいます。

その他にも、中国の昔の民家を模したレストランや、
店全体を監獄に見立てたレストランなど、
様々なレストランが出てきていますが、
料理はどこも安くておいしいです。
逆に言えば、いくら内装に趣向を凝らしても、
料理が安くておいしくなければ生き残って行けないほど、
北京のレストラン業界は厳しい競争に晒されている、
という事です。

1996年、私が北京に来たばかりの頃は、
北京のレストランには、いかにも公費で飲み食いしており、
無理やりフカヒレや鮑など高い料理を注文し、
大声で騒ぎながら白酒でカンペイを繰り返す、
下品なおやじたちで溢れていました。
その後、共産党幹部による数々の汚職事件が発覚し、
共産党は人民の信頼を回復する為、
国家機関及び国有企業の紀律の引き締めを行いました。
これにより、レストランの接待需要は大幅に減少したのですが、
代わりに、経済の発展により所得が上がってきた個人が、
自分のお金で友人たちと食事を楽しむ様になってきました。

公費ならば1品500元(7,500円)もするフカヒレスープも
平気で注文できますが、
個人が自分のお金で食べる様になると、
安くておいしくて楽しいレストランを慎重に選ぶ様になります。
こうした客層の変化により、北京のレストラン業界は、
値段にも味にも雰囲気にも厳しい個人客を獲得する為に、
競争の激化が進んでいきました。


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