第116回
「鉄飯碗」から「下崗職工」へ

更に、最近では、雇用の安定と福利厚生が「売り」だった国有企業も、
倒産やリストラを余儀なくされる所も出てきました。

その昔、国有企業は落としても割れない鉄のお茶碗、
「鉄飯碗(てぃえふぁんわん)」と呼ばれていました。
国有企業に勤めていれば、バックに国家が付いているので、
絶対に食いっぱぐれる事は無い、という意味です。
日本で言えば「親方日の丸」といった所でしょうか。

しかし、中国政府が労働者の雇用の確保や生活の保障を
余りにも国有企業に押し付け、
国有企業も経営効率より
従業員の雇用を重視した経営をして来ましたので、
当然の結果として、大赤字の国有企業が増えてきました。
中国政府としては失業者の増加は
社会の不安定化につながりますので、
ずっと国有企業を支援して来ましたが、それも限界に達し、
国有企業の赤字問題が、
中国経済全体に影響を及ぼす様な
大問題になってしまいましたので、
各国有企業にリストラを要求し、
黒字化の見込みが立たない国有企業に就いては倒産もやむなし、
との政策を打ち出しました。

この為、中国では多くの失業者や、
「下崗(しゃーがん)」と呼ばれる一時帰休者が
大量に発生しました。
失業と「下崗」の差は、会社に籍があるか無いかの違いです。
失業すると会社とは何の関係も無くなってしまいますが、
下崗は会社に雇用されたまま「出社に及ばず」と言われる事です。
中国語で職場の事を「崗位(がんうぇい)」と言いますが、
「崗位から下りる」ので、「下崗」と言う様です。

しかし、この「下崗」は日本企業の一時帰休とは違い、
一般的に職場復帰の見込みはほとんど無く、
給料もゼロに近くなってしまいますので、
籍が会社に残るというだけで、
実質は失業に限りなく近いものです。
「下崗」した人達は、
生活の為に他の職を見つけなければなりません。
北京には外国人である私より
北京の地理を知らないタクシーの運転手がたくさんいますが、
これらの人達は通常、以前は工場労働者をやっていた
「下崗職工(しゃーがんじーごん)」です。


←前回記事へ 2003年7月28日(月) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ