第139回
「チャイニーズドリーム」

一緒に出演したアメリカ人男性は
モトローラの中国法人に勤めている、との事でした。
ロシア人女性は、北京でロシアとの貿易の仕事をしている、
と言っていました。
2人とも北京に住んで既に10年以上になるそうです。

この2人の意見は非常に似通っており、
「まとまった金があれば、マンションを買う」というものでした。
「今はまとまった金が無いので賃貸暮らしをしているが、
家さえ買ってしまえば、他の生活費はいくらもかからないので、
生活が行き詰まるリスクが減少するから」というのがその理由です。

食料や衣類は安いですが、不動産が異様に高い北京では、
それは確かに一理あります。
家さえあれば、北京で野垂れ死ぬ事はまず有り得ません。
実際、月210元(3,150円)の失業手当だけで生活している人が
たくさんいる訳ですから。

もう1人の中国人女性は、
就職してまだ2年と若かった事もあるのですが、
「理財」の概念を全く理解しておらず、
「まとまった金が手に入れば、
自分の能力を高める為に学校に通ったり、
体を鍛える為にジムに通ったりしたい」と言っていました。
その理由は「これから働いてたくさんのお金を稼ぐ為には、
自分の能力を高める事や、体を健康に保つ事は、
最も重要な投資だと思うから」との事でした。

「おいおい小姐、それ全然「理財」ぢゃないでしょうに」
と突っ込んでやろうかと思いましたが、
後から考えてみると、優れた能力と健康な体があれば、
誰でも「チャイニーズドリーム」を掴み取れる可能性がある、
という、今の中国を象徴する様な発言だな、と思いました。

中国のほとんどの人はまだ資産らしい資産を持っていません。
株式投資もギャンブルの一種だと思っている人がほとんどです。
そんな状況で「理財」と言われても、「?」となるのは当然の事です。
「理財」は、経済発展を終えて、
一般大衆が資産を持つ様になった国だけに
普及する概念である事を再認識すると共に、
優れた能力と健康な体があれば、
誰でも「チャイニーズドリーム」を掴み取れる可能性がある、
という夢を持って生きて行ける中国の若者を
ちょっと羨ましく思いました。

ちなみにこの中国人の小姐、
学校に通って能力を高めて、ジムに通って体を鍛えて、
会社勤めである程度まとまったお金を稼いだら
自分で事業を興して、事業でたくさんのお金を稼いだら、
今までの恩返しに、うんと親孝行するんだそうです。


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