第195回
「おいしいものをたくさん」

とは言え、初めて行くレストランで
「宴会」の「点菜」をしなければならない場合、
1皿の量がどのぐらいか分かりませんし、
どの料理がおいしいかも分かりません。
そういう場合は、素直にウエートレスに訊くに限ります。

単純に注文を取って、
料理を出すだけの日本のウエートレスとは違い、
中国のレストランのウエートレスは、
どこの店でも「点菜コンサルタント」的な役割も果たしています。
1皿の大きさや料理のバランスを考慮して、
「点菜」を助けてくれます。

中には「その料理はまずいから止めた方が良い」とか、
「これじゃ量が多すぎるから、1品少なくしなさい」という様な
アドバイスをしてくれるウエートレスもいます。
店のオーナーが聞いたら怒り出しそうなアドバイスですが、
「点菜」をする人にとっては、心強い味方です。

中国ビジネスをしていると、中国企業の人たちを日本に招いて
「宴会」をする機会も出て来るかと思います。
そうした場合、どこへ連れて行けば良いか悩む所です。
大切なお客様だから、と高級懐石料理などに連れて行けば、
ものすごいお金を払っているにも関わらず、
中国側からは「これっぽっちの料理しか出て来ないなんて。
我々は歓迎されていないのではないか」と思われてしまいます。

フランス料理もいけません。
以前、「日中石炭会議」という、
日中の石炭関係者が一同に会す会議が沖縄で開かれた際に、
ホテルで日本側主催者が開いた中国側参加者を歓迎する「宴会」が
フランス料理でした。
コース料理を一通り食べて、デザートが出てきた頃に、
メインディッシュがステーキ一切れだった事に
腹を立てた中国側参加者が
「吃不!(ちーぶばお!、まだ腹一杯食ってない!)」
と騒ぎ出し、
日本側主催者が慌ててホテルに頼んで
大量のパンを持ってきてもらう、
という事態が起きました。

「出された食べ物が少なくて怒るだなんて、
中国側参加者も大人気ない」と思うなかれ、
中国の人たちの習慣から言えば、
出された食べ物が少ない
=歓迎されていない
=わざわざ日本まで来て侮辱された、
と受け取られてしまうのです。

日本料理もフランス料理も、
高級になればなるほど量が少なくなる、
という傾向があります。
「おいしいものをちょっとだけ」という
その考え方は分かるのですが、
中国では「おいしいものをたくさん」が「宴会」の基本です。
中国では「食べきれないほどの量の料理を出す事が、
歓迎の意味を表す」という事を肝に銘じて、
レストランやメニューを選ぶ必要があります。


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