第222回
日本の「遠い」は中国の「近い」

北京は非常に乾燥した所です。
雨はほとんど降りませんし、洗濯物の乾きもえらく早いです。
特に冬場の乾燥度合いはひどく、
日本から来たばかりの人は、のどを痛めたり、
異様に電圧の高い静電気に悩まされたりします。

先日、日本から来られたお客様に、
「北京は沿海部の都市なのに、
なんでこんなに乾燥してるんですか?」と訊かれました。
確かに、中国全体の地図を見ると、
北京は海に近い所に位置しているのですが、
それでも一番近い海である天津から150kmも離れています。
日本で言えば、東京と長野ぐらいの距離です。
北京は実は、「内陸の街」なのです。

しかし、広大な国土を持つ中国からしてみれば、
150kmなんていう距離は「非常に近い」部類に属します。
こんな例からも分かる通り、
日本と中国では距離感が全く違います。
日本の「遠い」は中国の「近い」なのです。

これだけ国土が広い所でビジネスをするには、
輸送コストを如何に抑えるか、が非常に重要になってきます。
付加価値の低い商品は、運ぶ距離が長ければ長いほど、
価格に占める輸送コストの比率が高くなってしまいます。

例えば、石炭。
発電用の一般炭を中国から輸出する場合、
FOB価格(積出港本船渡しの値段)は、
現在、トン当たり50ドル前後です。
この石炭、炭鉱から積出港までは、鉄道で運ぶのですが、
この輸送距離が長くなればなるほど、鉄道運賃が嵩みます。
故に、現状では、山西省、河南省辺りまでが
輸出用石炭の産地であり、
それより西になるとコストが合わなくなってきます。

それより内陸の炭鉱はどうするか。
輸出をしようとすれば、輸送コストの比率を下げる為、
商品の付加価値を上げる必要があります。
例えば、石炭を使って活性炭を作れば、付加価値が上がり、
価格はトン当たり500ドル以上になります。
これなら、寧夏回族自治区辺りで生産しても、
輸出が可能となります。

この様に、中国内陸部の企業は、
付加価値の高い商品を生産し、
価格に占める輸送コストの比率を下げる事によって、
消費地である沿海部の都市に販売したり、
輸出をしたりする事が可能となります。


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