第224回
生産する商品の高付加価値化

トン当たり2桁ドルの石炭の付加価値を上げて、
4桁ドルで売れるようにするにはどうすれば良いか、
という問題の答えです。

まずは、石炭を石炭火力発電所で燃やして電気を作ります。
電気をそのまま沿海部まで運ぶと、
ものすごい送電ロスが発生しますので、
余り得策とは言えません。
では、新疆で電気を使って
付加価値の高いものを作るにはどうしたら良いか。

1つのアイデアとして、
「電気の塊」と呼ばれているアルミを作る事が挙げられます。
アルミの精錬には、膨大な電力が必要となります。
日本でも以前はアルミの精錬が行われていましたが、
電力料金の高騰により、
日本のアルミメーカーはどんどん電気の安い国に工場を移転、
その結果、日本にアルミの精錬業は無くなってしまいました。

新疆の豊富な石炭資源を利用して電気を作り、
その電気でアルミを作れば、
トン当たり1,500ドル前後の値段で売る事が出来ます。
トン当たり1,500ドルの商品ならば、
沿海部までの鉄道運賃がトン当たり30ドルかかっても、
価格に与えるインパクトは非常に小さくて済みます。

更に、精錬によって出来た地金を加工して、
アルミ製品まで作れば、付加価値はもっと高まり、
輸送コストが価格に占める割合はもっと低くなります。
これは新疆の様な内陸部のアルミ加工工場でも、
ちゃんとした品質のものを作りさえすれば、
沿海部の市場で沿海部にある工場と互角に戦える、
という事を意味しています。

もちろん、1トンの石炭から
1トンのアルミが出来る訳ではありませんし、
アルミの原料であるボーキサイトの調達コストも
考慮に入れる必要がありますので、
一概に2桁ドルの石炭が4桁ドルのアルミになる、
という事は言えないかと思います。

しかし、中国内陸部の人たちにとって、
消費地である沿海部から遠く離れている、
というハンデを克服する為には、
生産する商品の付加価値を上げて、
価格に占める輸送コストの割合を下げる必要がある、
というのは厳然たる事実です。

「西部大開発」をスローガンに、
内陸部の開発に力を入れる中国。
狭い日本では想像出来ないぐらい海から遠い地域の発展は、
生産する商品の高付加価値化にかかっている、
と私は思うのです。


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